講義No.12275 政治学

選挙の実施日が変わるのはなぜ? データから考える選挙と政治

選挙の実施日が変わるのはなぜ? データから考える選挙と政治

選挙はいつ行われるか

日本の衆議院は、任期満了前に解散して選挙を行うことができます。任期を満了することが他国に比べて突出して少ない点が特徴です。日本を含む民主主義国家では、与党の議員が票を得やすいことから景気の良い時期に選挙が実施されやすいと言われています。それに対し、非民主主義国家(権威主義国家)では独裁者が政権内部を統制するために、あえて景気が悪い時期に選挙を行うことがあります。選挙を行うかどうかはさまざまな理由で決定され、そのタイミングはしばしば変更されています。

データを通して政治を考える

ある研究では、第二次世界大戦後の世界各国で行われた国政選挙のデータを収集し、選挙のタイミングに着目してさまざまな統計分析を行っています。データを使えば、例えば本来選挙が行われる日と実際に行われた日が一致しない選挙を正確に抽出し、どのような要因が選挙日程を何日早めたか(あるいは遅らせたか)を考えることができます。先行研究では「国政選挙が当初の予定より早く行われるのはそれが与党に有利だから」という見方がありますが、データを分析すればその見方の妥当性を検証することもできます。同様に、選挙が早まることで、国民がその背景をどう捉え、どのような態度・感情をもつのかを分析することもできます。選挙のタイミングに関する客観的なデータは非常に有用なのです。

選挙は民主主義を保証しない

民主主義国家における選挙は、国民の意見を政治に反映させるために不可欠な要素の一つです。しかし、だからといって選挙が必ず民主的であるとは限りません。例えばクラスで修学旅行の行先を決めるとき、誰かが「多数決(選挙)で決めよう」と言い出したとします。ひょっとするとその人は、そのタイミングで多数決をとれば自分の行きたい場所に行ける確率が高いから、すぐに多数決で決めてしまおうと言っているのかもしれません。政治に関しても同様です。選挙の内容と実施された日程に注目することで、選挙がもつ思わぬ効果を発見することにつながるのです。

参考資料

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高知工科大学 経済・マネジメント学群 数理経済マネジメント専攻 准教授 矢内 勇生 先生

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政治経済学、比較政治学、計量政治学

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メッセージ

政治学とは、意見や利害が異なる人が集まったときに、誰のどの意見がいつどのように採用されるのかを考える学問だといえます。政治と聞くとあなたからは遠い存在だと感じるかもしれませんが、友人関係や家族関係など、私たちの生活のあらゆる場面に政治が存在しています。政治学を学ぶことで、国会や地方議会などの狭い意味での政治の世界だけでなく、自分の身近な世界の動きがよりクリアに見えるでしょう。世の中で起こっているさまざまな問題に気づき、その解決の手段を考える上でも、政治学は非常に有用な学問です。

先生への質問

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高知工科大学は、システム工学群・環境理工学群・情報学群、および経済・マネジメント学群という、理系・文系にわたる4学群を擁する大学です。本学は「大学のあるべき姿を常に追求し、世界一流の大学をめざす」という高い志を掲げ、人を育てるのではなく「人が育つ大学」でありたいという教育モットーを根底にクォータ制などの先進的な教育システムをいち早く取り入れて、機動的に最先端を走っています。まずは資料請求から。いつでも無料でお届けいたします。