残念な選挙 途上国の貧困はなぜなくならない?
国民が貧しくても政治家は裕福な途上国
「途上国」と聞くと、経済が発展しておらず、国民が貧しい生活をしているというイメージがあるかもしれません。しかし、お金持ちもいます。それは政治家です。国会議員や知事、市長などの政治家は、自分たち富裕層に都合の良い制度をつくって貧富の差をさらに大きくしています。貧困層~中間層が自分たちの声を届けるためには自分たちの代表を議員や市長などにすればいいのですが、それを選ぶ選挙にも大きな問題があります。
きれいな選挙ができない理由とは?
フィリピンの選挙では、富裕層の立候補者が貧しい人にお金をばらまいて自分に投票するように働きかけます。貧困層はその日生活するにもギリギリなので、わずかなお金でももらえれば投票してしまうのです。さらに富裕層の立候補者は、私兵を雇って敵対する立候補者や支援者を脅かしたり、暴力を振るったり、時に行方不明にしたりします。それを警察に取り締まってもらおうとしてもあてにはなりません。なぜなら警察の地域本部長を任命できるのが、富裕層の知事や市長だからです。
富裕層に勝った貧困層代表の女性市長
しかし、1988年に、貧困層出身の女性が市長に当選した例があります。その時は、NGO(非政府組織)・キリスト教会・地域組織が力を合わせて支援しました。貧しい人には「自分たちの声を届ける選挙は大事だから、お金は受け取らないように」と説明してまわり、脅しや暴力には、武器を持たない300人もの仲間を集めて対抗しようとしたのです。こうして女性は当選したものの、次の選挙では富裕層の立候補者が買収に力を入れて女性市長の名誉を傷つける宣伝をしたために落選してしまいました。
このように途上国で政治や体制を変えていくのは大変なことです。変えていくためには、貧困層~中間層が少しでも生活を向上させて、エンパワーメント(社会的な力)をつけていくことが必要です。現在、徐々に生活は豊かになっており、やがて政治を変えることにつながるはずです。
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