講義No.12287 社会福祉学

各国の報告書を読み解き、障害者が生きやすい社会をめざす

各国の報告書を読み解き、障害者が生きやすい社会をめざす

条例に対する各国の取り組みを比較

「障害者権利条約」という国連条約があります。障害のある人が他の人と同じように人権と基本的自由をもつことを確保し、障害のある人の固有の尊厳の尊重を促進することを目的として、障害のある人の権利の実現のための措置等について定める条約です。この条約では、仕事や教育、居住、余暇活動へのアクセスなどさまざまな分野の取り組みを求めています。日本を含む条約締結国は、自分たちの国が条約をどう進めているかという実施状況の報告書を作成しています。当事者団体も報告書を提出することができます。これらの報告書を読み比べることで、他国の取り組みから学ぶことができます。

資料から読み取れる各国の考え方

例えば、障害のある人の暮らしの場の支援を見てみましょう。ある国では十分な住居を提供することは当局の任務として、すべての人に使いやすい公共空間と障害のある人に適した住宅や居住形態の供給が進められています。そして支援サービスとケアを連携させ利用者がコントロールできるよう支援するのです。障害のある人のために特別の施設やグループホームを作るのとは異なる進め方のように思われます。報告書の上でのことですが、資料からさまざまな考え方やアプローチを知り、考えるだけでも意義あることでしょう。

障害者の意思を受け止める社会に

重度の障害のある人も「~を食べたい」や「~したい」といった意思を持っています。しかし、その意思が見過ごされたり、ないものとして排除されたりしてしまうことは数多くあります。そして、当事者に「~したい」という意思があっても、社会にその受け皿がない状態では、結局我慢をさせてしまいます。「~ができて当たり前」や「その人が頑張れば済む話」と切り捨てるのではなく、それは本当にその人自身の問題なのか、社会の問題ではないかということを考え直すことが大切です。ソーシャルワーカーは社会から排除されてしまう人たちのサインに気づき、社会との関わりについて真っ先に考えることができる仕事です。

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埼玉県立大学 保健医療福祉学部 社会福祉子ども学科 准教授 高島 恭子 先生

埼玉県立大学 保健医療福祉学部 社会福祉子ども学科 准教授 高島 恭子 先生

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先生が目指すSDGs

メッセージ

社会には、さまざまな人がいます。障害のある人だけでなく、国籍や性別の違いだけで、私たちも無意識に誰かを排除している可能性があります。ソーシャルワークについて学ぶことで、誰もが同じように社会に参加できる世界のために、行動することができます。魔法のように一瞬にして社会を変えることはできませんが、人と社会の関わりを常に考えることが大事です。そのためにも、歴史や地理、倫理や現代社会など幅広い分野の知識を蓄え、関心を広げていきましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

埼玉県立大学に関心を持ったあなたは

埼玉県立大学は、保健・医療・福祉の「連携と統合」を目指し、学科を超えた地域活動・研究活動を行っています。多くの優秀な若者たち、明日の社会づくりの希望を持った若い力がいつかそれぞれの地域や職場で、あるいは世界のどこかで、高い志と豊かな感性、深い知識や技術を持って貢献できる可能性を秘めた人材として育っていけるよう全力で応援します。