各国の報告書を読み解き、障害者が生きやすい社会をめざす
条例に対する各国の取り組みを比較
「障害者権利条約」という国連条約があります。障害のある人が他の人と同じように人権と基本的自由をもつことを確保し、障害のある人の固有の尊厳の尊重を促進することを目的として、障害のある人の権利の実現のための措置等について定める条約です。この条約では、仕事や教育、居住、余暇活動へのアクセスなどさまざまな分野の取り組みを求めています。日本を含む条約締結国は、自分たちの国が条約をどう進めているかという実施状況の報告書を作成しています。当事者団体も報告書を提出することができます。これらの報告書を読み比べることで、他国の取り組みから学ぶことができます。
資料から読み取れる各国の考え方
例えば、障害のある人の暮らしの場の支援を見てみましょう。ある国では十分な住居を提供することは当局の任務として、すべての人に使いやすい公共空間と障害のある人に適した住宅や居住形態の供給が進められています。そして支援サービスとケアを連携させ利用者がコントロールできるよう支援するのです。障害のある人のために特別の施設やグループホームを作るのとは異なる進め方のように思われます。報告書の上でのことですが、資料からさまざまな考え方やアプローチを知り、考えるだけでも意義あることでしょう。
障害者の意思を受け止める社会に
重度の障害のある人も「~を食べたい」や「~したい」といった意思を持っています。しかし、その意思が見過ごされたり、ないものとして排除されたりしてしまうことは数多くあります。そして、当事者に「~したい」という意思があっても、社会にその受け皿がない状態では、結局我慢をさせてしまいます。「~ができて当たり前」や「その人が頑張れば済む話」と切り捨てるのではなく、それは本当にその人自身の問題なのか、社会の問題ではないかということを考え直すことが大切です。ソーシャルワーカーは社会から排除されてしまう人たちのサインに気づき、社会との関わりについて真っ先に考えることができる仕事です。
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先生情報 / 大学情報
埼玉県立大学 保健医療福祉学部 社会福祉子ども学科 准教授 高島 恭子 先生
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