ICT・AIにマッチ! 多職種実践を可視化するF-SOAIPとは
叙述形式の記録のデメリット
介護や相談などの対人支援において、記録は不可欠です。福祉現場の多くは、支援の対象となる利用者の活動や発言、支援の内容を時間順に日記のような叙述形式で記録されています。叙述形式は記録者が自由に書けるメリットがある一方、書き方のルールが統一されておらず、記録者の文章力に左右されるというデメリットがあります。多職種連携で支援に当たるためには、誰が見ても明確にわかる記録になっていることが大切です。
項目形式の記録法のメリット
そこで、項目形式の生活支援記録法(F-SOAIP/エフソ・アイピー)を開発しました。まず、一つの支援場面を簡潔に表す言葉でタイトルF(SNSでつける#のイメージ)をつけます。その内容として、利用者の発言をS、観察などから得られた情報をO、支援者の考えをA、実施内容をI、当面の対応予定をPとして、これらの記号を冒頭に書いてから箇条書きに記録します。
医療・福祉などの記録をこの記録法に統一することで、膨大な情報の整理が行え、専門職の実践プロセスを可視化できるのです。また今後、情報のICT(情報通信技術)化を進める際は、6項目によりデータ化することで、AI(人工知能)の活用や、政府が目指すデジタルトランスフォーメーション(デジタル化による変革)にも貢献できます。
多機関・多職種連携
現在、注目されている80代の親が長く引きこもった50代の子を支えるという「8050問題」では、親に対する介護支援のほか、子への就労支援や地域交流、世帯としての生活保護など、多様な支援が必要となります。この場合、行政の担当部署は複数となり、ケアマネジャーや訪問介護、NPOなど多機関・多職種の専門家が関わるため、情報を効率的に共有し、支援を円滑に進める記録が求められます。
F-SOAIPは使われる領域が広がるほど効果が期待できるものです。現在、対人支援共通の方法として、福祉や医療だけでなく、教育やカウンセラー、企業などへの広がりも見られ、国際発信も準備しています。
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先生情報 / 大学情報
埼玉県立大学 保健医療福祉学部 社会福祉こども学科 准教授 嶌末 憲子 先生
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