身体の機能だけでなく、人間らしさを回復するリハビリ
分身ロボットが働くカフェとは?
東京に「分身ロボット・カフェ」というものがあります。しかし、ロボットだけが接客しているわけではありません。離れた場所にいる人たちがタブレットやパソコンを使ってモニターで確認しながら、自分の分身ロボットを遠隔操作して、コーヒーを入れたり、接客をしたりしているのです。どんな人が操作しているかといえば、さまざまな病気や障害があるなど外出することが困難な人たちです。例えば、高校時代に事故で脊髄に損傷を負って手足が動かなくなった人が、口に操作用のスティックをくわえて端末を操作し、働いています。その人は英語が得意でもあり、外国人客になくてはならない存在です。
人間らしさを回復させるリハビリ
病気や事故で障害を負った人、機能が衰えた人には、病院や地域でリハビリを行います。リハビリには動作や身体の機能を回復させる「理学療法」と、さらに認知機能・日常生活・生きがい・社会復帰などの「人間らしさ」を回復させる「作業療法」があります。作業療法士は、リハビリのプランを立て、時にはまひが残っている患者が生活しやすいように衣服を改造したり、道具を作ったりもします。本人が何をしたいかは年齢や病態によってさまざまですが、それを探っていき、その人らしい生活や人生を送れるようにお手伝いをします。
多角的な関わりが求められる作業療法士
また作業療法士には対象者の”その人らしい”リハビリのプログラムづくりが求められるので、どの部分に重点を置いて関わるかなど、自分で戦略を立てて展開していけることは、この仕事の醍醐味(だいごみ)といえます。そして、患者が退院して、地域で暮らしていくステージになったら、訪問看護師・介護士・栄養士など多職種と連携して、患者の生活を再構築していきます。もし重度の障害があって働きたい人がいたら、「分身ロボット・カフェ」のような施設を紹介するのも支援のひとつです。作業療法士には、機能回復から人生の再構築まで、多角的な関わりが求められているのです。
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先生情報 / 大学情報
日本福祉大学 健康科学部 リハビリテーション学科 教授 山中 武彦 先生
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