自由貿易協定とグローバル企業
自社工場を持たないアパレル企業
あなたがいま着ているシャツは、どこの国で作られたものでしょうか。GAPやユニクロに代表されるファストファッション企業で行われている「SPA(製造小売業)」は、商品のデザイン、製造、小売りを一貫して手がけるシステムです。卸業者などの中間マージンが抑えられるとともに、顧客の要望を素早く反映できるメリットもあります。特徴的なのは、これらアパレル企業は自社工場を持たないことです。工場設立のための設備投資や工場の従業員の雇用を省き、外部の工場に生産を委託しているのです。
どの国で生産するのがお得?
どの工場に生産を委託するべきかを検討する時、ポイントのひとつとなるのが「貿易」です。材料の調達コストや人件費が安い国で生産することで、商品の価格を抑えられるからです。加えて、さまざまな国で締結される「自由貿易協定」では、加盟国間の関税が引き下げられるため、生産国選定の決め手になることがあります。
自由貿易協定とグローバル企業の動き
近年の自由貿易協定で大きな話題になったのは「TPP(環太平洋パートナーシップ協定)」でしょう。当初アメリカや日本をはじめとする12か国が署名したTPPは、加盟国間の関税が最大限撤廃されるだけでなく、サービスや投資の自由化などもめざす協定でした。ところが2017年に、アメリカのトランプ政権がTPP離脱を宣言したことで、位置づけが大きく変化しました。それに対して中国主導で進められた協定が「RCEP(地域包括的経済連携)」です。日本、中国、韓国、ASEAN(東南アジア諸国連合)10カ国など15カ国が参加し、世界での影響力を高めつつあります。各国の思惑が交差する自由貿易協定の動向は、グローバル企業の戦略にどう影響するのでしょうか。グローバル企業にとって、追い風にもリスクにもなりうる自由貿易協定と、それに適応する企業の動きを注視することは、経営学の重要なテーマのひとつでもあるのです。
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先生情報 / 大学情報
公立鳥取環境大学 経営学部 経営学科 准教授 連 宜萍 先生
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