スポーツ選手の怪我、実は50%は予防可能なモノだった
育成の最大の敵は怪我
スポーツ選手の成長を阻害する最大の要因は怪我にあると言われています。継続が必要なトレーニングにおいて、離脱する期間は大きなロスになってしまい、怪我の重症度によっては機能性の低下も免れないためです。しかし現在、スポーツ科学の世界では、スポーツ選手の怪我の約50%は理論上、予防できるという説が有力視されています。
リスクを軽減するプログラム
怪我の傾向や発生要因は性別による差、あるいは競技による差など、種目や属性によってさまざまです。例えば、育成年代の女子は前十字靭帯断裂が男子に比べて約5倍起こりやすく、特にハンドボール、バスケットボール、サッカーなどではその兆候が顕著であることもわかっています。最大の敵ともいえる怪我ですが、ケースに応じたトレーニングプログラムを的確に運用することで、起こる確率を格段に低くできることが理論的には証明されています。
調査はPDCAサイクルに近い形で進められます。まずはどういう怪我が多いのかの傷害調査から始まり、次に怪我が起こるメカニズムと要因を探ります。これをもとにして弱い部分を補うトレーニングプログラムを作成し、実践したあと、実際にどのくらい怪我が減ったかの検証を行います。実際、ある野球チームで肘の内側の障害を対象にプログラムを実施した場合と、しない場合とで比較したところ、後者の方が怪我の発生が明らかに増加傾向にあるというデータが得られました。
課題は実践と運用にあり
ただ、スポーツの育成現場に目を向けると、怪我は一向に減っていません。プログラムを構築する研究は徐々に進んでいるものの、現場での実践と運用については、まだまだ発展途上の段階です。
こうした怪我の予防は、見落とされがちな選手をすくい上げることにもつながり、才能がアクシデントによってつぶされるというケースの減少にもつながります。研究、そして現場への運用がさらに進むことが、スポーツ界の発展には欠かせないファクターであることは間違いありません。
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早稲田大学 スポーツ科学部 教授 広瀬 統一 先生
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