身近なところから平和について考え、実践する「平和研究」とは
戦争を根本的に否定する
地球に暮らす約80億の人のうち、「平和が嫌い」という人はごくわずかなはずです。しかし現在も戦争や殺人、飢餓といった問題は絶えません。ではどうすれば世界から争いがなくなり、平和が訪れるのかを考えて実践する学問を「平和研究」といいます。平和研究は、第二次世界大戦以降に確立された若い学問です。
学問の中には、「戦争に勝つ方法を考える」ことを含め、「時と場合によって戦争は必要である」と考える分野もあります。平和研究は、「こうした発想がある限り戦争はなくならない」と考える、つまり戦争を根本的に否定する点に特徴があります。
身の回りにある「構造的な暴力」
平和の実現のために考えて活動する学問とはいえ、「貧しい国や紛争地域に出かけて、戦争や略奪といった直接的暴力を受けて困っている人々を助ける」といったことだけが平和研究の対象ではありません。例えば日本で暮らす外国人やセクシュアル・マイノリティと呼ばれる人たちをはじめ、国籍やジェンダー、宗教、貧富の差、障害の有無といった要因によって差別される人たちが、私たちの身近なところにも多数存在します。平和研究では、そうした「人を社会から疎外する力」を「構造的な暴力」と位置づけて、これらを取り除くことも研究の重要な目的に掲げています。
都市というフィールド
平和研究にとって「都市」は重要なフィールドの一つです。例えば現代の東京は、IT技術者のような高度専門職から、コンビニや道路工事の現場で働く技能実習生まで幅広い人が世界中から集まる世界有数の国際都市です。また、東京の新大久保や大阪の鶴橋、横浜や神戸にあるコリアタウン・チャイナタウンでは、ポップカルチャーや食など多様な文化に触れることもできます。さらに都市にある喫茶店や食堂、銭湯といった場は、平和について皆で話し合う「対話の場」にもなり得ます。このように、都市をはじめとする生活空間の中で、誰もが平和について考え、実践できる点も、平和研究の大きな特徴なのです。
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