早寝早起きが健康とは限らない生物時計の仕組み
朝型か夜型かを決めるのは半分が遺伝
人間の体内時計は24時間より少し長い約25時間のリズムに設定されています。体内時計は人間だけでなく昆虫や植物も持つ生物共通の仕組みであり、どんな生物でも24時間プラスマイナス4時間ほどのリズムに設定されています。体内時計とは生物が進化の過程で獲得した、生存するための機能と考えられています。朝型人間・夜型人間といった分類がありますが、実は50%ほどは遺伝で決まります。「時間生物学」の観点からすると、「朝型=健康」とは断言できないのです。詳しい理由はまだ解明されていませんが、中学生、高校生という第二次性徴の時期にかけては、生物学的に夜型の傾向が強くなります。
避けたい、寝る前のブルーライト
特に冬は日の出が遅く日の入りも早いので、リズムが自然と夜型になりやすい時期です。そこで早寝早起きの生活習慣を強制すると、人によっては体調を崩すケースもあります。朝型の遺伝子を持っていても、年齢によっては夜型の傾向が強くなることがあるのです。しかし、遺伝の影響が大きいといっても、夜にパソコンやスマートフォンなどのブルーライトを浴びてしまうとさらなる夜型化を招きます。日中に浴びる光は体のリズムを整え、睡眠の質を高めますが、夜に浴びる光は体内時計のリズムを後ろにずらしてしまいます。
海外には学校の始業時間を遅らせる制度も
海外には「スタートスクールレイター」という学校の始業時間を遅らせる制度があります。実際にこの制度を導入したことで生徒の成績が上がり、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)が向上したというデータもあります。朝型になるか夜型になるかは遺伝の影響が大きいため、誰もが努力すれば朝型になれるわけではないのです。朝型は健康で夜型は不健康といったイメージは根強くありますが、それは一概にはいえないものです。思春期から青年期には生物学的に夜型になる時期には、社会も夜型にシフトさせるなど柔軟な対応が求められるようになるでしょう。
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北海道大学 教育学部 教育学研究院 准教授 山仲 勇二郎 先生
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