講義No.12305 社会福祉学

高齢者の社会的孤立が及ぼす深刻な影響とは?

高齢者の社会的孤立が及ぼす深刻な影響とは?

孤立すると介護・死亡リスクが上昇

日本では少子高齢化が進み、一人暮らしの高齢者が増加傾向にあります。近年では少子化や核家族化に加え、近所付き合いも希薄になり、他者との接触がほとんどない「社会的孤立」が問題となっています。ある研究によれば、高齢者で、他者との交流頻度が週1回未満だと要介護リスクが約30%上がり、月1回未満であれば死亡リスクが約30%上がるという結果が出ています。

孤独で起こる脳反応は

孤立しがちな人は、緊急時はもちろん、日常的にも助けてくれる人がいないのが問題で、生活上の不安や強い孤独感から幸福感が低い傾向にあります。孤独は身体的苦痛と同じような脳反応が起こり、余命や健康状態にも強い影響を及ぼすことがわかっています。現在も地域の中で見守り活動などが行われていますが、本人が周囲に相談できず、見守りを希望しない人も多いため、本来届くべき人ほどサービスが利用されていないという悪循環に陥っています。

孤立状態を改善するために

こうした状態を改善するにはどうしたらいいのでしょうか。一つはコミュニケーションが取りやすくなるICTの積極活用です。二つめは支援を受けるためのハードルを下げることです。現在の日本の福祉サービスは、自ら申し出る「申請主義」を取っていて、支援を受けるまでに物理的・心理的なハードルが存在しています。孤立しがちな人ほど、助けを求められず抱え込みやすいので、もれなくカバーされる体制づくりが必要です。そして三つめが民間の活用です。趣味の会やスポーツの会などに週1回以上参加した人は、その後の介護費が低いことがわかっていますので、福祉事業の中だけではなく、民間の積極的な活用が期待されています。
単身の高齢者が増える中、社会的孤立の増加も予想されています。身体的に健康であることはもちろん、精神面でも健やかであるために、社会的孤立を予防することは大変重要なことといえるでしょう。

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先生情報 / 大学情報

日本福祉大学 社会福祉学部 社会福祉学科 教授 斉藤 雅茂 先生

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メッセージ

あなたは5年後、どんな自分でありたいですか? 将来の自分を想像した時にワクワクできる未来に向かって頑張ってみてください。本学部には毎年300名を超える、社会福祉を学ぶ学生が入学しています。これだけ多くの社会福祉に興味を持つ若者に出会えるのは貴重な機会ですし、福祉・医療関連の就職先に数多くのOB・OGがいることも本学の魅力です。社会福祉学では身近な生活問題を扱いますが、日頃から広い視点で物事をみていると福祉の分野でも大きく貢献できます。ぜひ一緒に社会福祉を学びましょう。

先生への質問

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