高齢者の社会的孤立が及ぼす深刻な影響とは?
孤立すると介護・死亡リスクが上昇
日本では少子高齢化が進み、一人暮らしの高齢者が増加傾向にあります。近年では少子化や核家族化に加え、近所付き合いも希薄になり、他者との接触がほとんどない「社会的孤立」が問題となっています。ある研究によれば、高齢者で、他者との交流頻度が週1回未満だと要介護リスクが約30%上がり、月1回未満であれば死亡リスクが約30%上がるという結果が出ています。
孤独で起こる脳反応は
孤立しがちな人は、緊急時はもちろん、日常的にも助けてくれる人がいないのが問題で、生活上の不安や強い孤独感から幸福感が低い傾向にあります。孤独は身体的苦痛と同じような脳反応が起こり、余命や健康状態にも強い影響を及ぼすことがわかっています。現在も地域の中で見守り活動などが行われていますが、本人が周囲に相談できず、見守りを希望しない人も多いため、本来届くべき人ほどサービスが利用されていないという悪循環に陥っています。
孤立状態を改善するために
こうした状態を改善するにはどうしたらいいのでしょうか。一つはコミュニケーションが取りやすくなるICTの積極活用です。二つめは支援を受けるためのハードルを下げることです。現在の日本の福祉サービスは、自ら申し出る「申請主義」を取っていて、支援を受けるまでに物理的・心理的なハードルが存在しています。孤立しがちな人ほど、助けを求められず抱え込みやすいので、もれなくカバーされる体制づくりが必要です。そして三つめが民間の活用です。趣味の会やスポーツの会などに週1回以上参加した人は、その後の介護費が低いことがわかっていますので、福祉事業の中だけではなく、民間の積極的な活用が期待されています。
単身の高齢者が増える中、社会的孤立の増加も予想されています。身体的に健康であることはもちろん、精神面でも健やかであるために、社会的孤立を予防することは大変重要なことといえるでしょう。
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日本福祉大学 社会福祉学部 社会福祉学科 教授 斉藤 雅茂 先生
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