講義No.14044 経済学

地域を次代へつなぐ、身近な金融機関とは

地域を次代へつなぐ、身近な金融機関とは

信用金庫の支店が街に多い理由は?

預金をするだけでは違いが見えにくいのですが、信用金庫(信金)や信用組合(信組)と一般の銀行とでは、金融機関としての業務範囲が異なっています。大きな違いは、信金や信組は、活動エリアに制限があり、取引先も一定規模以下です。事業の目的は、地域との共存共栄・地域の活性化です。地域経済をスモールビジネスから元気にしていくことです。地域の会員や組合員との相互扶助から歴史が始まっているので、まさに地域と一体であり、言い換えれば、地域外に出ていくことはできません。

地域商社で地域をサポート

2021年に法律が改正され、信金や信組は融資をするだけでなく、子会社として「地域商社」を立ち上げられるようになりました。地域商社ではまさに地域を元気にするための取り組みをしています。商品開発や既存商品の改良、販売先のマッチングなどを、地域の中だけでなく、全国におよぶ信金のネットワークを生かしてサポートしているのです。例えば、商品化で必要な資材の仕入れ先を紹介する、商品のサイズを提案するといった例もあります。顧客となった商店街の名物飲食店が次の世代に事業をしっかり受け継いでいくこと、一人で始めた新しいビジネスが人を雇用できるほどに成長していくことなどで、地域は活力を得ていくのです。

長期的な調査研究が必要

地域全体の活性化は一朝一夕でできることではありません。その中で期待されている信金や信組の地域商社活動は、人口減少や働き手不足に悩む地方において、今は一歩ずつ成功事例を増やしていく段階と言えるでしょう。地域にとって必要な商店や中小企業からのニーズに応えながら支援を行い、顧客が本業で利益を出して返済ができるよう、事業者としての足腰を強くする仕組みも重要です。
経済学には「地域金融」という研究領域があります。事例を集め、トータルに分析して、研究対象である信金や信組の事業活動と同じく、地域を元気にするための研究だと言えます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

日本福祉大学 経済学部 経済学科 教授 谷地 宣亮 先生

日本福祉大学 経済学部 経済学科 教授 谷地 宣亮 先生

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金融論、地域金融論

メッセージ

大学の経済学部では、卒業後何をしたいか、目標が明確ではない学生が多いように思います。ただ、私がいつも言うのは、大学時代にいろいろな経験をしてから将来を考えれば良いということです。経済学部は将来の選択肢が広いのが利点でもあります。アルバイトをする学生も多いですが、そういう場でもぜひ大人と話すよう伝えています。普段話さない年代の人としっかり話をしながら、自分自身の見識を広げていってほしいのです。いろいろな気づきが得られるはずなので、あなたも話す機会を逃さないでください。

日本福祉大学に関心を持ったあなたは

1953年の創立以来、卒業生は約9万人。全国に広がる卒業生ネットワークは、全国各地で就職を強力にバックアップしています。卒業生は福祉・医療、ヘルスケア部門を展開する一般企業や流通・商社、金融・保険、運輸・サービス、情報系の企業など、さまざまな分野にも進出。全国で幅広い分野での活躍が期待されます。また、本学では公務員・教員採用試験合格のために対策講座に力を入れており、多数の卒業生が、地方自治体、官公庁、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校などで活躍しています。