高齢者も若者も抱える「社会的孤立のリスク」を減らすには
運動よりも人とのつながりの方が健康になる?
地域の高齢者たちの社会的孤立を防ぎ、健康寿命を伸ばすための運動プログラムが実施されています。これまで健康寿命を伸ばすにはウォーキングなどの簡単な運動が効果的だと考えられてきましたが、コロナ禍以降、その常識は変わりつつあります。健康寿命を伸ばすためには運動よりも、知人や友だちと趣味や娯楽を通じたつながりの方が効果的だという調査結果が出ています。身近な人とおしゃべりしながら活動することが健康に良いということです。
健康や病気の原因は身体の外にある?
一人で定期的に運動を続けていても、人との交流が少ないと、鬱(うつ)や認知症にかかりやすいというデータもあります。実際に、運動を主体とするよりも、皆で集まって楽しくおしゃべりするようになってからの方がプログラムへの出席率が上がり、参加者からも「今度はこんな運動をしてみたい」といった要望も寄せられるなどの変化が生じています。会話の機会を増やすことで、参加者の意識や行動にも変化が見られるようになるのです。このように健康や病気の原因は身体の内部でなく社会や環境の中にあるということです。
時間を要する社会的ひきこもり
また、「ひきこもり」という社会的孤立の問題もあります。そこには「8050(はちまるごーまる)問題」と呼ばれる、80代の親が50代の子どもの面倒をみるような状況もあります。ひきこもりの当事者たちは甘えているのではなく、どうにかしたいという気持ちを持っています。そこを力ずくで学校に行かせようとしたリ、働かせようとしたりしても逆効果です。親が生活保護を申請しても本人が拒否するケースが多く、解決は困難です。解決の一案として挙げられるのが、本人の気持ちを尊重して後ろめたさを感じさせず、安心して楽しく暮らせる環境を作ることです。ひきこもることを非難するのではなく見守るというスタンスを伝えて、本人のアクションを待つのです。社会的ひきこもりは、ゴールを設定せず焦らず本人にまかせる姿勢が必要です。
参考資料
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大阪経済大学 人間科学部 人間科学科 教授 髙井 逸史 先生
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