ソーシャル・マーケティングによる味噌の売り方は?
ソーシャル・マーケティングとは
企業が商品を売るためにはどうしたらよいかを考える「マーケティング」に、社会的な視座を加えた「ソーシャル・マーケティング」が注目を集めています。その商品を買ったり使ったりすることが、自然環境や地域社会などにもよい効果をもたらすべきであるという考え方で、1970年代のアメリカで生まれたと言われています。ソーシャル・マーケティングの身近な事例として、ある「味噌(みそ)」の売り方を見てみましょう。
味噌の売り方は難しい
味噌には日本各地の特色が表れます。「我が家の味」がある家庭も多いため、いつもと違う銘柄を買ってもらうのが難しい商品のひとつと言えるでしょう。スーパーでは、大手メーカーの味噌が750g300円ほどで売られています。そこで500g1000円の味噌を売るにはどうすればよいでしょうか。この味噌の原料の大豆は、鳥取の農家が土づくりから見直し、極力農薬を使わない農法で作られたものです。塩もミネラルが豊富に含まれる沖縄産の海塩を使い、原料と味に徹底的にこだわったところ、値段が高くなりました。
ターゲットユーザーに「刺さる」味噌
最初に取り組んだのは「ターゲットユーザーの明確化」です。「おいしさ」と「安心」に価値を認めてお金を払ってくれる人たちとして、「共働きの子育て家庭」をターゲットに定めました。世帯収入が比較的高く、「次世代を担う子どもたちにはいいものを食べさせたい」と考える人たちです。また、味噌を使った加工食品「肉味噌」も考案しました。ポイントは味噌を使った惣菜ではなく、野菜炒めに使ったり冷奴に添えたりと、自分でアレンジができる加工食品にしたことです。共働きで忙しいため、家事にあまり時間はかけられないけれど、完全にできあがった惣菜を食卓に出すことに抵抗感を覚える彼らに「刺さる」商品として開発されました。また、味噌や肉味噌を買うことで、生産者や日本の農業が守られるという、「社会によいこと」にもつながっているのです。
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公立鳥取環境大学 経営学部 経営学科 准教授 竹内 由佳 先生
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