災害リスクや地域医療の現状が一目瞭然! 期待されるGISの役割

災害リスクや地域医療の現状が一目瞭然! 期待されるGISの役割

地図に情報をプラスしたGISとは

道に迷ったとき、頼るのは地図です。ひと目で、道や地形やまちの広がりなどが把握できる地図は、言葉で道を教えてもらうのとは比較にならない情報量を持っています。最近ではネット上で地球のどこでも自在に表示できる地図が普及し、移動中にスマートフォンなどで簡単に見られます。GPS技術が発達したおかげで自分の位置や経路確認も容易になりました。地図を使って空間を視覚的にとらえ、そこにさまざまな情報を加えることによって、いろいろな分野で非常に便利に使えるデータベースができます。これがGIS(Geographic Information System)とよばれる技術です。

防災の分野でも大きな役割を果たす

GISは大型ショッピングセンターの出店計画など、特にマーケティング分野で注目されてきました。地図に地域別の人口や交通条件、既存の商業施設の分布状況などの情報を重ね合わせて分析すれば、どこに新しい店を出すのが有効か俯瞰(ふかん)的に把握することができます。近年では東日本大震災を契機とし、GISを防災に積極的に活用しようという動きが出てきました。地形図や地盤強度、建物の密集度、居住人口密度などの情報を空間データとして総合的に把握することにより、地震や津波でどの地域が被害を受けることが予想されるのか、避難経路をどうすればいいかなどの情報をまとめたハザードマップを作成することができます。

救急車で患者を搬送するのに何分かかる?

医療分野でもGISは有効です。例えば、あるまちにおける救急医療機関の分布と、まちのそれぞれの場所から最も近い医療機関へ何分で救急車で患者を搬送できるか、といったデータを統合すれば、救急医療機関がどこに不足していて、これから地域の医療環境をどう整えていけばいいかが見えてきます。わが国の大きな課題である、災害に強く、医療福祉設備の整った「リスクに強いまちづくり」に、GISの大きな貢献が期待されているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

大阪公立大学 文学部 人間行動学科 准教授 木村 義成 先生

大阪公立大学 文学部 人間行動学科 准教授 木村 義成 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

地理学、地理情報学、人間行動学

メッセージ

デジタル技術の発達で、地図はより生活に身近なものになりました。カーナビは道路地図にコンビニやガソリンスタンド、レストランなど知りたい情報を詰め込んだリアルタイム型の地図です。ネットを使えば旅行先でもすぐにその地域の地図を見られます。地理情報学と聞くと難しそうな印象を持つかもしれませんが、日頃親しんでいるデジタル地図はまさに地理情報学を形にしたものです。多様なデータと地理的な情報を分析し、よりよいまちづくりと暮らしをめざすエキサイティングな地理情報学を極めてみませんか。

先生への質問

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大阪公立大学に関心を持ったあなたは

2022年4月、大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、大阪公立大学が誕生しました。大阪市立大学、大阪府立大学は共に約140年の歴史ある大学であり、水都として交通の要衝であった大都市大阪とともに発展してまいりました。この地の利を生かし、理論と実際を有機的に結合することにより、両大学は大都市大阪で生活する人々が必要とする精神文化の発展や産業と経済の振興を担う中心機関としての役割を果たしてきました。本学はさらなる異分野を融合・包摂した新たな学問の創造と多様な世界市民の育成を目指します。