温暖化や環境変化にどのように対応すべき? 持続可能な漁業のために
環境変化への対応が課題
温暖化で海水温が上昇したこと等により、魚の生息に適した海域が変化しています。地域で今まで獲れていた魚が獲れなくなり別の魚が獲れるようになる、養殖で今までと同じやり方では魚や貝が育たなくなる、といったことが各地で発生しています。高齢化が進み、漁業の担い手も不足し、漁村が立ち行かなくなるという問題も深刻化してきました。自然環境と人間社会の変化に対応して、漁業や漁村を持続可能にしていくことが喫緊の課題になっています。
地域で新たに捕れるようになった魚のブランド化
温暖化の影響で新たに獲れるようになった魚は、地域の人達には見慣れない、食べ付けない魚です。たくさん捕れるからと売りに出しても、なかなか買ってもらえません。そこで、食べてもらうための工夫が必要になります。もちろん、ただ売れさえすればよいわけではなく、漁業を続けていけるような価格で買ってもらうことが必要です。そのために、全国各地でこうした魚のブランド化が行われています。例えば、地域のサワラの「脂の乗り」を訴求するために、魚の体脂肪率を測定し選別して、ブランドタグを付けて販売している産地があります。その設計に際しては、消費者にアンケートを行い、統計学の手法も使用しながら、選別基準をどうするか、価格は選別・タグ付けのコストに見合うか等が調査されています。
新しいビジネスモデルを構築する
カキの養殖でも、温暖化の影響等により収量が減るという問題が発生しています。解決方法のひとつとして、新たな漁場の開拓や、成育途中に漁場を移動させる方法等が検討されています。そのためには、ビッグデータや環境調査により、環境がカキの成育に適した漁場を明らかにする必要があります。こうした新たなビジネスモデルの構築のためには、経営の知識だけでなく環境に関する知識も必要とされます。
この他にも、漁業に関するさまざまな試みが各地で進められています。ただし、獲って売るだけでは漁業を継続できない地域も多く、加工や観光等、多面的な取組みが必要です。
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