祭りが中止でいくら損? 「産業連関分析」で経済波及効果を算出する
経済波及効果を求めるには
新型コロナウイルスの感染拡大によって、さまざまな祭りやイベントが中止・延期になりました。それによって生じる損失について、報道では「○○円の経済波及効果が失われた」などと表現されます。そうした経済波及効果を算出する際には「産業連関分析」という手法が用いられています。産業連関分析は、ある地域の1年間の経済活動を、産業間や消費者と政府などといった財・サービスの取引関係をまとめた「産業連関表」という一覧表を用いながら、地域の経済波及効果を計測する経済学の手法です。
産業連関表を使って
例えば、ある市で行われる祭りの経済波及効果を考えてみます。まずは祭りへの来場者数を算出します。次にその人たちが日帰りなのか宿泊するのか、県内から来たのか県外から来たのか、また滞在中にいくらのお金を使うのかについても調査します。こうしたデータは金融機関や観光庁などの公的機関によって数値が公表されています。そして収集したデータを市の「産業連関表」をもとに市内の飲食業、宿泊業、小売業、交通・運輸業といった各産業の項目に分類し、数学の「行列」を応用した計算式を使って分析することで、経済波及効果を割り出すことができます。
エビデンスの材料を提供
「産業連関表」は特定の地域内(市)の産業を取り扱っているため、例えば隣の市と行き来するお金については、分析の対象に含まれず、またその算出方法や対象も明確に定まっていません。そのため、一部メディアで報道される経済波及効果は実際より大きいのではないか、といった疑問も生じています。当然ながら、今日では自治体が政策を決定するうえで、しっかりとした「エビデンス(根拠)」が求められるようになっています。政策を実行することで生まれるコストや効果をなるべく正確に算出するためには、産業連関分析が一助となります。私たちの暮らしにも間接的に関わる産業連関分析には、今後も精度の向上を含め、更なる発展が期待されます。
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先生情報 / 大学情報
岩手県立大学 総合政策学部 総合政策学科 経済・経営コース 教授 ティー・キャンヘーン 先生
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