トラウマによるPTSDを予防するためにできることは?
意外と知られていないトラウマの本当の意味
あなたは友だちと「あの映画、すごく怖くてトラウマになった」というような会話をした経験はありませんか。このときに使っている「トラウマ」は、実は医学的な意味とは少し違います。医学的な意味でトラウマは「対処することができないほど大きな衝撃を受けたときにできる心の傷」のことをいいます。例えばトラウマになりやすい体験として、地震や水害などの自然災害、交通事故、性被害などが挙げられます。
愚痴や気分転換ではどうにもならない
通常、私たちはストレスになる出来事が起こると、気分転換をしたり、友だちに相談をしたりすることで、一時的につらさを感じても持ち直すことができます。しかし、トラウマになるほどひどい出来事を体験すると、今までの対処法ではうまくいかず、心がどんどんつらくなっていきます。そして、どうやっても持ち直せないときに「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」の診断が下されることになります。現在、このPTSDの症状を予防・軽減する方法について研究が進められています。
周囲の理解やサポートも必須
有効な方法の1つと考えられるのが「トラウマがさまざまなつらさを引き起こす仕組み」を、多くの人に知ってもらうことです。なぜならトラウマとなる体験後、時間が経ってから症状が出た場合、本人も周囲の人もなぜつらいのか理解できず、それによってさらに悪循環が起きてしまうケースが多いからです。つらさの仕組みがわかるだけでも安心感が持てたり、誰かに「助けて」と言えたり、周囲の人は本人の苦しみを理解し寄り添うことができます。また「しんどい」と相談を受けた人が「PTSDの症状かもしれない」と気づければ、適切な治療につなげることも可能です。
このような理由から1人でも多くの人にトラウマやPTSDについて知ってもらうのが理想です。まずは、相談を受けることが多いスクールカウンセラーなどの学校関係者、役所の保健師などに対する心理教育やストレスマネジメントによって普及・啓発活動が進められています。
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岩手県立大学 社会福祉学部 人間福祉学科 准教授 瀧井 美緒 先生
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