農地の力、生物の力を生かす環境保全型農業
環境負荷をできるだけ減らす農業へ
自然農法から機械化が進んだ大規模農業まで、わが国の農業はさまざまな発展を遂げてきました。現在、主流の農薬や除草剤、化学肥料を使った近代農業は、均一の品質を保ち、効率良く収穫できますが、土壌や河川の汚染や生態系への影響など、自然環境への負荷が大きいのが難点です。また、有機栽培や無農薬栽培は環境への負荷が少ないことから近年注目を浴びています。ただし、栽培に手間がかかり、虫食いなどで出荷できない規格外品が出やすく、収穫量の低下、コスト高など、生産性が下がるというデメリットもあります。そんな中で注目されているのが、「環境保全型農業」です。
土の中の生物を利用する
「環境保全型農業」とは、農地に生きている生物や植物などを利用しながら作物を栽培する方法です。従来の農業では育てたい作物以外の雑草や害虫を、除草剤や農薬で排除し封じ込めてきました。環境保全型農業では作物に有益な生物、例えば細菌などの土中微生物、アメーバやミミズといった土壌生物を活用しながら、自然の生態系のサイクルを壊さずに、できるだけ収穫量も減らさず生産性を保つ栽培をめざします。
畑を耕さず、土の養分となる植物を植える
具体例として、畑を耕さずに作物を栽培する「不耕起栽培」があります。畑を耕さなければ、物理的な力が土に加わらず生態系のサイクルが保たれ、土中の有機物が循環し、土壌が豊かになります。また、収穫を目的としない土の養分となる植物「カバークロップ(緑肥)」を植えることもあります。こうした方法を組み合わせながら行う、環境にやさしい農業です。
実際に環境保全型の農業へシフトするには、収穫量の減少による収益減や作業が増えることによる効率の低下など、まだまだ課題がたくさんあります。しかし、現在はさまざまな分野で環境保全への取り組みが進められており、農業分野においてもそれは例外ではありません。自然環境と経済活動双方のメリットを考え、バランスの取れた農業が必要とされています。
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