健康や食文化を支える微生物の驚くべき力!

健康や食文化を支える微生物の驚くべき力!

あなたは微生物と共に生きている

自分の体に「腸内細菌」という微生物が生息していることは知っているでしょう。ヒトの細胞数はおよそ60兆、遺伝子数は約2万2000です。一方、腸内細菌の細胞数は数百兆、遺伝子数は約330万で、ヒトの細胞よりも多い菌が腸にすんでいるのです。腸内細菌は、人間では作り出せない物質を作ることで、病気を防いだり、免疫力を高めたりして、あなたの健康を支えており、体質や心理状態にも深く関与していることが最近わかってきました。人間は、さまざまな微生物を体内に宿し、共生しながら生きている「超有機体」と考えられる時代になってきているのです。

微生物の「発酵」の力が生活を豊かに

微生物が持つ力は、あなたの身近な生活にも生かされています。例えば、日本の伝統食品である味噌・醤油、納豆や漬け物をはじめ、ヨーグルトやパン、お酒なども微生物によって作られています。微生物は、細胞内に核膜で包まれた核を持たない「原核生物」と、核膜に包まれた核を持つ「真核生物」に大別されます。納豆菌や乳酸菌などは原核生物です。一方、酵母や麹菌は真核生物で、味噌や日本酒などの製造に用いられます。これらの微生物がおこなう「発酵」の力によってさまざまな有用物質が生成され、食品としてあなたの体内に取り込むことができるのです。

微生物を発見し、解明して、活用する

微生物は自然界のあらゆるところに存在します。近代納豆製法の基礎は、納豆菌を単離し純粋培養した研究者によって確立されました。薬品原料などの有用物質を作る微生物も毎年数多く発見されています。また、農作物に被害を与えるイノシシなどをおいしく発酵して、ご当地グルメなどに用いた町おこしの取り組みもあります。一方、真核生物である酵母の生理メカニズムを解明することは、ヒトの細胞と生命の探究にもつながります。応用微生物学やバイオテクノロジーは、今後も大発見が期待される研究分野と言えるのです。

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先生情報 / 大学情報

京都工芸繊維大学 工芸科学部 応用生物学域 応用生物学課程 教授 井沢 真吾 先生

京都工芸繊維大学 工芸科学部 応用生物学域 応用生物学課程 教授 井沢 真吾 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

応用微生物学

メッセージ

パンやヨーグルトなどの発酵食品、一部の薬や化学原料などは、微生物を使った発酵によって作られています。また、腸の中にすんでいる腸内細菌が、健康や寿命、心の状態にも深く関与していることも最近わかってきました。微生物は人間には作り出せない物質を作ることで、暮らしを豊かにしたり、病気を防いだり、免疫力を高めたりして、あなたの生活を支えているのです。
微生物学にはまだまだ未知の領域が多く残されており、これから大発見が期待される分野です。伝統的発酵食品の宝庫である京都で、ぜひ一緒に学びましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

京都工芸繊維大学に関心を持ったあなたは

歴史都市京都にあって、本学は、伝統文化や伝統産業との深い結びつきを背景に、工芸学と繊維学にかかわる幅広い分野で常に先端科学の学理を探求し、「人に優しい実学」 を志向する教育研究によって、広く産業界や社会に貢献してきました。さらに、本学は、長い歴史の中で培った学問的蓄積の上に、感性を重視した人間性の涵養、自然環境との共生、芸術的創造性との協働などを特に意識した「新しい実学」を開拓し、伝統と先端が織りなす文化を創出する「感性豊かな国際的工科大学」を目指します。