光と農学が合体、21世紀の農業を守る「アグリフォトニクス」
光を農業に役立てる
スマートフォンやタブレット、テレビといった工業製品には、電子ディスプレイが使われています。ディスプレイの背面にはバックライトがあり、その光が液晶などでさまざまに制御されて、人間が読み取れる文字や絵になります。ディスプレイをはじめ、これまで主に工業分野に応用されてきた光の研究は、近年では農業分野にも役立てられています。栽培を効率化し、生育を早めるなど、農学分野と連携して光を農業に役立てる研究や技術を「アグリフォトニクス」といいます。地球規模で気候が変動している今、直接的な影響を受けやすい農業を守る研究として、大きな注目を集めています。
アグリフォトニクスの具体例
寒い時期に農産物を栽培するために、ビニールハウスが用いられます。ハウス内では温度が保たれ、ビニールを透過する太陽が作物の光合成を促進します。光合成は、太陽光に含まれるさまざまな波長(色)の光のうち、青と赤の光を、植物に含まれるクロロフィルという色素が吸収することで行われます。しかし、山陰地方など、冬季に晴天が少ない地域では、太陽光が不足し光合成がうまくいかないケースがあります。太陽光自体を強めることは難しいですが、例えば、人工的に青と赤の波長の光を出す照明を取り付け、青と赤の光だけを補うことができれば、冬季の栽培効率もぐっと高めることができます。
生育を早めることも
光は、光合成だけでなく植物の生育スピードにも密接に関係しています。草むらをよく見ると、手前にある草よりも、奥にある草の方が背丈が高いことに気付きます。これは、奥に行くほど太陽光が届きにくく光合成も難しくなるので、フィトクロムという色素が働いて、茎の成長を早めて背丈を伸ばし、太陽光をキャッチしやすくしているからです。フィトクロムは、赤と赤外の境あたりの波長の光を感じて働くことがわかっています。このメカニズムを活用すると、野菜の生育や花の開花時期を早めて、従来では難しかった時期に栽培・出荷することも可能になるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
鳥取大学 工学部 電気情報系学科 教授 大観 光徳 先生
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