講義No.14251 建築学

生き物たちのオアシスに! 穴だらけのコンクリートとは

生き物たちのオアシスに! 穴だらけのコンクリートとは

生き物と仲良しなコンクリートとは

コンクリートは社会のインフラに不可欠な構造材料ですが、無機質で冷たいなどあまりよいイメージを持たれていません。ところが同じコンクリートでも、生き物と親和性が高く、環境改善にも役立つコンクリートがあります。「ポーラス(多孔質な)コンクリート」というもので、名前の通り穴がたくさん空いているのが特徴です。通常のコンクリートはセメント、水、砂、砂利を使って隙間なく作られますが、ポーラスコンクリートは砂利を多くして砂はほとんど入れず、水を通す隙間だらけの構造にします。この隙間こそが生き物を育てるカギです。

藻場の復元に活躍

近年、日本の沿岸では海藻類が減少して海が砂漠化する「磯焼け」という現象が問題になっています。魚などの海生生物が生息する海藻の群落を「藻場」と呼びますが、ポーラスコンクリートを海に沈めて藻場を復元する取り組みが行われて大成功を収めました。ポーラスコンクリートの穴だらけの表面は天然の岩場よりも海藻が着生しやすく、その隙間はエビやゴカイなどのすみかとなります。その結果、それをえさとする小さな魚が集まり、さらに小魚を食べる大きな魚が回遊するという藻場の生態系がよみがえったのです。

材料も環境に優しく

藻場復元のポーラスコンクリートには、砂利の代わりに、廃棄された「がいし」を砕いたものが使われました。がいしとは電線を支える絶縁体のセラミックスです。環境への配慮から、いろいろな産業副産物や廃棄物を材料として有効利用することが検討されています。また、ポーラスコンクリートは植物の根が張りやすく水も通すことから、屋上緑化などへの応用も研究されており、そこには保水力のある軽石が使用されています。
このように用途によっていろいろな材料が使われるため、材料によって異なる製造方法が必要な場合も少なくありません。より簡便にポーラスコンクリートが作れるように、どのような材料でも同じように扱える製造法の確立が求められています。

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先生情報 / 大学情報

崇城大学 工学部 建築学科 教授 武田 浩二 先生

崇城大学 工学部 建築学科 教授 武田 浩二 先生

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建築構造学、建築材料学

先生が目指すSDGs

メッセージ

コンクリートを環境に役立たせたいという私たちの開発研究は、誰も作ったことがないものを作り、実際にそれが使えるのかを確かめるというものです。明確な答えがあるわけではないし、本当にできるかどうかもわかりません。でも、探求心があるからこそチャレンジするのです。答えがわかっていることを後から追いかけても面白くありません。できるかどうかわからないことに果敢に取り組んで、試行錯誤を繰り返しながら知恵を使い、創意工夫の中で形にしていく、そんな思考力をあなたも身につけてほしいです。

崇城大学に関心を持ったあなたは

崇城(そうじょう)大学は薬学、生物生命、工学、情報、芸術の5学部からなる総合大学です。“世界で活躍できるプロフェッショナルの育成”を目指し、最先端の施設・設備・研究を備え、学生一人ひとりを厳しく育てる実践的な教育プログラムにより、高い就職率や国家資格合格率を維持しています。理系私立大学では全国初の英語を公用語とする学習施設「SILC(シルク)」があり、英語ネイティブ講師による英語教育が成果を上げています。本学の地である熊本から産業界の未来を切り拓く若者を輩出する学舎でありたいと決意しています。