記憶障害「もの忘れ」は認知症の始まり?
加齢による記憶力の低下と認知症の違い
人間は年齢を重ねるにつれ次第に記憶力が衰えてきます。つまりもの忘れ自体は、老化に伴う自然な変化であり、健康面で問題があるわけではありません。その一方で、65歳以上になると、およそ6人に1人の割合で認知症を発症するといわれています。単にもの忘れがひどくなったのか、それとも認知症の兆候なのかを明らかにするためには、専門家の判断を仰ぐ必要があります。
もの忘れ外来とは?
最近、「もの忘れ外来」などと呼ばれる認知症の専門外来が増えてきています。多くのもの忘れ外来では、まず問診を行い、認知症の疑いがあるかどうかを判断します。もの忘れ外来受診者の問診票の内容を細かく分析すると、単にもの忘れが増えた人と、認知症が疑われる人との間には、明確な違いがあることがわりました。例えば、ほぼすべての人が「もの忘れが気になる」と回答しますが、健康な人は「メモなどの工夫をすることでカバー出来ている」のに対して認知症の人は、「うまくカバー出来ずに失敗が目立つようになる」といった特徴があります。さらに「銀行のお金の管理が苦手」、「初めての場所に一人で行くのが難しい」などの生活面での困難な事柄も増えている傾向がありました。認知症は治療薬も開発されてきているので、症状が進行する前に、早期に発見して対策を講じることが重要です。そのためには、健康な状態とはいえず、認知症のリスクが高い軽度認知障害(MCI)と呼ばれる状態で早く発見して治療につなげることが大切であり、もの忘れ外来の大事な役割の一つです。
認知機能が低下しても生き生きと暮らせる社会へ
認知症の方だけでなく、歳を取ればすべての人に何らかの認知機能の低下が起こります。出来ないことに注目するだけでなく、出来ていることを活かしてその人らしい生活が継続出来るように、周囲の人々や社会全体が適切にサポートしていけることが、日本だけでなく高齢化が進む世界各国で求められています。
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先生情報 / 大学情報
帝京平成大学 健康メディカル学部 言語聴覚学科 教授 植田 恵 先生
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