講義No.12354 医療技術

記憶障害「もの忘れ」は認知症の始まり?

記憶障害「もの忘れ」は認知症の始まり?

加齢による記憶力の低下と認知症の違い

人間は年齢を重ねるにつれ次第に記憶力が衰えてきます。つまりもの忘れ自体は、老化に伴う自然な変化であり、健康面で問題があるわけではありません。その一方で、65歳以上になると、およそ6人に1人の割合で認知症を発症するといわれています。単にもの忘れがひどくなったのか、それとも認知症の兆候なのかを明らかにするためには、専門家の判断を仰ぐ必要があります。

もの忘れ外来とは?

最近、「もの忘れ外来」などと呼ばれる認知症の専門外来が増えてきています。多くのもの忘れ外来では、まず問診を行い、認知症の疑いがあるかどうかを判断します。もの忘れ外来受診者の問診票の内容を細かく分析すると、単にもの忘れが増えた人と、認知症が疑われる人との間には、明確な違いがあることがわりました。例えば、ほぼすべての人が「もの忘れが気になる」と回答しますが、健康な人は「メモなどの工夫をすることでカバー出来ている」のに対して認知症の人は、「うまくカバー出来ずに失敗が目立つようになる」といった特徴があります。さらに「銀行のお金の管理が苦手」、「初めての場所に一人で行くのが難しい」などの生活面での困難な事柄も増えている傾向がありました。認知症は治療薬も開発されてきているので、症状が進行する前に、早期に発見して対策を講じることが重要です。そのためには、健康な状態とはいえず、認知症のリスクが高い軽度認知障害(MCI)と呼ばれる状態で早く発見して治療につなげることが大切であり、もの忘れ外来の大事な役割の一つです。

認知機能が低下しても生き生きと暮らせる社会へ

認知症の方だけでなく、歳を取ればすべての人に何らかの認知機能の低下が起こります。出来ないことに注目するだけでなく、出来ていることを活かしてその人らしい生活が継続出来るように、周囲の人々や社会全体が適切にサポートしていけることが、日本だけでなく高齢化が進む世界各国で求められています。

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先生情報 / 大学情報

帝京平成大学 健康メディカル学部 言語聴覚学科 教授 植田 恵 先生

帝京平成大学 健康メディカル学部 言語聴覚学科 教授 植田 恵 先生

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神経心理学、言語聴覚障害学、老年学

先生が目指すSDGs

メッセージ

言語聴覚士や公認心理師の資格の取得をめざして学ぼうと考えている人は多いと思いますが、この分野は神経心理学と呼ばれる脳の機能と認知機能のメカニズムを調べる学問領域でもあり、みなさんが想像しているよりはるかに幅広く、奥深いものです。人の役に立つための知識や技術を身に付けながら、関心のある領域についてより深く掘り下げて、知的好奇心を満たすような学び方が出来るでしょう。もっとたくさんの人に興味を持っていただきたい学問領域です。ぜひ一緒に研究しましょう。

先生への質問

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