誰もが心地よく過ごせるためのユニバーサルデザイン

誰もが心地よく過ごせるためのユニバーサルデザイン

誰にとっても心地よいデザイン

「ユニバーサルデザイン」は、障害のある人や高齢者のための特別なものではありません。本来、必要な人にはしっかりと役立ち、そうではない人には自然になじむデザインが理想です。
その理念を追求するために、ある商業施設で実証実験が行われました。公共空間で視覚障害がある人のために設置されている誘導用ブロックは、例えばトイレなら「入り口まで」で終わってしまうことがほとんどです。実証実験では、個室まで誘導するためにトイレ内の床にゴム製の細いラインを設置しました。これに対して、一般の利用客にアンケートを取ったところ、多くの人がそのラインを「床のデザインの一部」と認識しており、誘導用とは気づいていませんでした。つまり、必要な人には役立ちながらも、違和感のないデザインが実現したのです。

誤認を逆手に

ユニバーサルデザインを建築に生かすには、利用する人の特性をよく理解することが大切です。例えば認知症の人は、写真に写っているものを本物だと思い込んでしまうことがあります。この特徴を生かして、ある老人施設では入所者に開けてほしくない扉に本棚の写真を貼りました。すると扉を本棚と勘違いして、自然と開けなくなりました。ただ鍵をかけるだけではなく、本人がストレスなく安全に過ごせる環境をつくるという視点が、これからの建築や空間づくりには欠かせません。

誰もがくつろげる空間

ユニバーサルデザインの概念は、さらに広い分野にも広がっています。例えば、誰でも時には人の視線や話し声から離れて過ごしたくなることがあるものです。そうした気持ちに寄り添った空間づくりもユニバーサルデザインの一つです。そこで、誰もが心地よく過ごせる休憩スペースのあり方も模索されています。これから社会はますます多様化し、高齢化も進みます。そこで求められるのは、「誰かのため」だけではなく、「みんなのため」のユニバーサルデザインであり、それを当たり前のものとして自然に取り入れていくことが大切です。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

公立鳥取環境大学 環境学部 環境学科 准教授 老田 智美 先生

公立鳥取環境大学環境学部 環境学科 准教授老田 智美 先生

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ユニバーサルデザイン、建築計画学

先生が目指すSDGs

メッセージ

将来の夢に向かって一直線に進むことも大切ですが、時には少し寄り道をして、知らない世界をのぞいてみましょう。建築の分野一つとっても、大学に進むと想像以上に多くの学問や可能性が広がっていることに気づくはずです。しかも、技術の進歩がめまぐるしい現代では、今は当たり前のことが、数年後には大きく変わっているかもしれません。だからこそ、柔軟な気持ちでさまざまなことに触れて、吸収していってください。自分自身の思いがけない変化も楽しみながら、未来を広げていってほしいです。

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本学は環境学部と経営学部の2学部を設置し、「環境」と「経営」2つの視点をもった普遍的な「知力」を土台に、人と人とのつながりを通して身に付く「人間力」を形成し、主体的に学び、考え、行動し、課題解決や新しい価値を創造できる、10年後、20年後の社会でも活躍できる人材を育成する学びを展開しています。
小規模大学だからこそできる学生一人ひとりを大切にした学生生活で、また、多文化交流空間「英語村」の設置や、就職支援も充実しています。
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