誰もが心地よく過ごせるためのユニバーサルデザイン

誰にとっても心地よいデザイン
「ユニバーサルデザイン」は、障害のある人や高齢者のための特別なものではありません。本来、必要な人にはしっかりと役立ち、そうではない人には自然になじむデザインが理想です。
その理念を追求するために、ある商業施設で実証実験が行われました。公共空間で視覚障害がある人のために設置されている誘導用ブロックは、例えばトイレなら「入り口まで」で終わってしまうことがほとんどです。実証実験では、個室まで誘導するためにトイレ内の床にゴム製の細いラインを設置しました。これに対して、一般の利用客にアンケートを取ったところ、多くの人がそのラインを「床のデザインの一部」と認識しており、誘導用とは気づいていませんでした。つまり、必要な人には役立ちながらも、違和感のないデザインが実現したのです。
誤認を逆手に
ユニバーサルデザインを建築に生かすには、利用する人の特性をよく理解することが大切です。例えば認知症の人は、写真に写っているものを本物だと思い込んでしまうことがあります。この特徴を生かして、ある老人施設では入所者に開けてほしくない扉に本棚の写真を貼りました。すると扉を本棚と勘違いして、自然と開けなくなりました。ただ鍵をかけるだけではなく、本人がストレスなく安全に過ごせる環境をつくるという視点が、これからの建築や空間づくりには欠かせません。
誰もがくつろげる空間
ユニバーサルデザインの概念は、さらに広い分野にも広がっています。例えば、誰でも時には人の視線や話し声から離れて過ごしたくなることがあるものです。そうした気持ちに寄り添った空間づくりもユニバーサルデザインの一つです。そこで、誰もが心地よく過ごせる休憩スペースのあり方も模索されています。これから社会はますます多様化し、高齢化も進みます。そこで求められるのは、「誰かのため」だけではなく、「みんなのため」のユニバーサルデザインであり、それを当たり前のものとして自然に取り入れていくことが大切です。
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