農薬を使わずにケニアのトウモロコシを害虫から守れ!

農薬を使わずにケニアのトウモロコシを害虫から守れ!

無農薬で害虫を減らす

トウモロコシを主食にするケニアでは、ズイムシという害虫による被害がたびたび発生し問題になっています。害虫は農薬を使えば防げますが、ケニアの一般農民に農薬を購入する経済的なゆとりはなく、無農薬で害虫被害を抑えなくてはなりません。これを解決するために推奨されているのが、主要作物から害虫を遠ざける植物と、害虫を寄せつける植物を一緒に植えて、害虫や昆虫の行動を制御するプッシュ・プル法という農法です。ケニアではトウモロコシ畑の畝(うね)の間に、ズイムシが嫌いな臭いを出す牧草を植え、さらに畑の周りにはトウモロコシよりも好きな別の種類の牧草を植えています。ズイムシを畑から外へ追い出し、外側のおとり植物に誘引するこの方法で、トウモロコシの収穫量は確実に増えています。

天敵昆虫を増やして害虫被害を抑制

畑に植える主要作物を、トウモロコシ単体ではなく複数混ぜて栽培し、アリやクモといったズイムシの天敵になる昆虫を増やして被害を減らす、という試みも行われています。畑の環境が複雑になり、生物の多様性が高まると同時に、天敵となる昆虫も増え、結果的にトウモロコシに対する害虫被害を抑える力が高まると考えられています。プッシュ・プル法を取り入れた畑では明らかに天敵昆虫の増加が確認されており、害虫がどれだけ減っているのか、その効果の検証についても研究が続いています。

生物多様性は農業にもメリット

一方、米を主食とする日本では、いろいろな農法で稲作が行われています。水の管理や肥料の与え方などの違いは、そこに棲む生物にも大きく影響することから、水田は生物多様性を育む場所として重要な意味を持っています。私たちの生活は、生物多様性がもたらす生態系サービスによって支えられているわけです。水田の生物多様性は、その水田で収穫された米への付加価値にもなります。生物多様性がもたらすそうしたメリットを、どのように農業に生かしていくのかが、今後の大きな課題と言えます。

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先生情報 / 大学情報

新潟大学 創生学部  准教授 小路 晋作 先生

新潟大学 創生学部 准教授 小路 晋作 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

生態学、応用昆虫学

先生が目指すSDGs

メッセージ

生態学は野外研究が中心で、その基本的な作業は動物の観察と、数を数えることです。とはいえ、途方もない時間をかけて、徹底的に根気よくデータを積み重ねていかなければなりません。想定外の出来事や我慢の連続です。しかしやり切った先に、予想もしなかった結果が見つかることがあるのです。
その瞬間に立ち会いたくて、私は今もフィールドワークを続けています。研究の計画を立て、身近な材料で道具をつくりながら、多様な生態系の不思議について一緒に学びましょう!

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新潟大学は教育面を最も重視し、学生が自らの専門を深く極めるばかりでなく、広い視野をもち、物事を総合的に判断する力を身につけること、及び実践と体験を通したきめ細かい教育を行うことによって、学生一人一人の個性を伸ばすことを目指しています。さらに、教養教育と専門教育を融合させた教育プログラムを提供し、特定の課題・分野の学習成果を認証したり、異なる学部の学生と教職員で構成されるグループが地域住民とのふれあいを通じて人間的成長を目指すなど、本学の理念である「自立と創生」に基づく学生育成を実践しています。