衣類やインテリアにも応用できる薄くて軽い「有機太陽電池」の可能性

衣類やインテリアにも応用できる薄くて軽い「有機太陽電池」の可能性

電気を通すプラスチックが原料

一般的にプラスチックは電気を通さない絶縁体の性質を持っていますが、中には「導電性ポリマー」と呼ばれる電気を通す性質のプラスチックも存在します。現在、この導電性ポリマーを使った「有機太陽電池」の開発が進められています。従来のシリコン系太陽電池と比べて、有機太陽電池の最大のメリットは薄くて軽い点にあります。製造工程も手軽で、技術が進歩すれば紙のような薄い素材にも印刷して電池を作れるようになるでしょう。フレキシブルに形を変えられるので、衣類の表面に貼り付ければ、バッテリーを携帯する必要がなくなり、ファン付きの空調服やヒーターを内蔵した服などを、より多様なシーンで着用できるようになるでしょう。

装飾用にもなる多機能性

有機太陽電池は農業用のビニールハウスにも応用できます。ビニールハウスに何キロもの重さの太陽電池を載せるには、従来よりもかなり丈夫な枠組みが必要ですが、有機太陽電池なら現在のビニールハウスの表面をそのまま太陽電池化することができます。
そして、有機太陽電池には装飾としての機能もあります。ラップのような薄くて透明な素材を使えば、建物の窓に貼ってステンドグラスのように自由に色を変えることができます。蛍光灯の光でも発電できるので、寝室用のおしゃれな照明などインテリア全般への応用も可能です。自然分解するプラスチックを素材にすれば、環境に優しいアクセサリーとして身につけることもできるでしょう。

課題はエネルギー変換効率と寿命

有機太陽電池にも課題はあります。それは、電気の変換効率が低く、寿命が短い点です。シリコン系太陽電池のエネルギー変換効率は15~20%で、寿命も30年はもつと考えられています。現状の有機太陽電池はそれらに及ばないため、当分はシリコン系太陽電池がメインとして使われるでしょう。まだまだ研究の途中ですが、それでも有機太陽電池には多くの可能性が秘められているのです。

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新潟大学 工学部 工学科 准教授 城内 紗千子 先生

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