起きてしまった戦争を国際法でコントロールできるのか?
国際法は世界共通の認識
国際法とは、国と国との関係におけるルールを定めた法律です。人権・人道や戦争、国家領域についてなど多岐にわたり、世界各国の共通認識に基づいて作られています。国際法に違反した場合、直接的な罰則はありませんが、批判を受け世界から孤立するなど、大きな影響力や抑止力があります。
本来、国際法では戦争は原則違反ですが、実際にはロシアのウクライナ侵攻などが起こっており、戦争はなくなりません。では起きてしまった戦争における国際法の役割とはなんでしょうか?
戦場での攻撃対象の基準は「戦力」
人を殺したり、物を破壊したりすることは、一般社会では罪になりますが、戦場においてはそれを避けることはできません。しかし武器を持たない人への攻撃や、民間施設を破壊することは、国際法違反です。その基準となるのは民間人か軍人かではなく「戦力であるかどうか」です。国際法には戦力という明確な基準を示すことで、無差別攻撃などを抑止する役割があります。
ただし、民間人でも武器を持てばもちろんのこと、スマホで敵の位置を教えるなどの情報提供行為も戦力とみなされます。学校に武器庫を作れば軍事施設です。現代の戦争では特に情報戦、サイバー攻撃が発達し、民間人が戦力となるケースが増えています。
双方にメリットを感じさせるルール
戦争における国際法でもうひとつ大きな役割は、戦場にいる人たちに戦争のルールを認識してもらうことです。簡単にいえば「ルールを守ったほうが得だ」という考え方です。例えば国際法では捕虜の待遇について、安全確保や健康維持などが厳しく定められています。兵士は捕虜になれば戦争が終わるまではVIP待遇となり、捕らえる側は人命を奪わずして相手の戦力を奪えるという、双方にメリットがあります。倫理観が通用しない戦場では、現場の人のメリットに直結する効率性、合理性が軍隊に秩序をもたらします。国際法を世界的ルールと認識することが、戦争の被害縮小や早期終結にもつながっていくのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。