発達障害児の会話の理解を、ニュアンスから見る
音声のコミュニケーションは苦手
発達障害の一種である、自閉スペクトラム症(ASD)と診断される人たちは、知的な問題がない場合でも、一般的に「状況に応じた言葉の理解が難しい」と言われています。聞いた言葉を字義通りに受け取る傾向があります。ASDの人は、「視覚優位」といって、顔の表情など視覚情報の理解は得意な場合が多いですが、音声情報をくみ取るのは苦手です。特に電話は音声のみのコミュニケーションなので、ASDの人には難しい側面があります。例えば、自宅にかかってきた電話で「大人の人はいる?」と聞かれたとします。そこには、「大人の人に替わってほしい」という意図がこめられているわけですが、そうした意図を察するのが難しいのです。
ニュアンスの理解が難しい
私たちは無意識に、会話の中でニュアンスを使い分けています。ふざけて「やめて~」と言っている時は、本当にいやなわけではないのですが、ASDの人はその意図が理解できず、「やめて」という言葉そのままの意味しか受け取れないことがあります。一般的な子どもは、幼稚園の年長くらいの年齢になると、「ふざけ合う」という遊びを始めます。その際に、ASDの子たちはうまく遊びに入れず、生きづらさを抱えることになります。
会話の中でニュアンスを変化させて使う言葉を用いて、ASDの評価指標を開発するという研究が進められています。これは、ASDの子どもたちへの支援と理解、そして、その保護者に対する子育て支援につながるものです。
軽度認知症の評価にもつながる
この研究は、高齢者の軽度認知症の判断にも応用できると考えられます。軽度認知症とは、認知症に移行する前段階の状態を指し、ASDと同じように「状況に応じた言葉の理解が難しい」という特徴があります。認知症は発症するとなかなか治らない病気ですが、軽度認知症の段階なら、回復に向かわせることができます。上記の特徴を早期に発見することができれば、認知症への移行を防ぐことが可能になるのです。
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先生情報 / 大学情報
県立広島大学 保健福祉学部 保健福祉学科 コミュニケーション障害学コース 准教授 堀江 真由美 先生
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