講義No.12410 保健・福祉学

発達障害児の会話の理解を、ニュアンスから見る

発達障害児の会話の理解を、ニュアンスから見る

音声のコミュニケーションは苦手

発達障害の一種である、自閉スペクトラム症(ASD)と診断される人たちは、知的な問題がない場合でも、一般的に「状況に応じた言葉の理解が難しい」と言われています。聞いた言葉を字義通りに受け取る傾向があります。ASDの人は、「視覚優位」といって、顔の表情など視覚情報の理解は得意な場合が多いですが、音声情報をくみ取るのは苦手です。特に電話は音声のみのコミュニケーションなので、ASDの人には難しい側面があります。例えば、自宅にかかってきた電話で「大人の人はいる?」と聞かれたとします。そこには、「大人の人に替わってほしい」という意図がこめられているわけですが、そうした意図を察するのが難しいのです。

ニュアンスの理解が難しい

私たちは無意識に、会話の中でニュアンスを使い分けています。ふざけて「やめて~」と言っている時は、本当にいやなわけではないのですが、ASDの人はその意図が理解できず、「やめて」という言葉そのままの意味しか受け取れないことがあります。一般的な子どもは、幼稚園の年長くらいの年齢になると、「ふざけ合う」という遊びを始めます。その際に、ASDの子たちはうまく遊びに入れず、生きづらさを抱えることになります。
会話の中でニュアンスを変化させて使う言葉を用いて、ASDの評価指標を開発するという研究が進められています。これは、ASDの子どもたちへの支援と理解、そして、その保護者に対する子育て支援につながるものです。

軽度認知症の評価にもつながる

この研究は、高齢者の軽度認知症の判断にも応用できると考えられます。軽度認知症とは、認知症に移行する前段階の状態を指し、ASDと同じように「状況に応じた言葉の理解が難しい」という特徴があります。認知症は発症するとなかなか治らない病気ですが、軽度認知症の段階なら、回復に向かわせることができます。上記の特徴を早期に発見することができれば、認知症への移行を防ぐことが可能になるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

県立広島大学 保健福祉学部 保健福祉学科 コミュニケーション障害学コース 准教授 堀江 真由美 先生

県立広島大学 保健福祉学部 保健福祉学科 コミュニケーション障害学コース 准教授 堀江 真由美 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

保健学、言語聴覚療法学

先生が目指すSDGs

メッセージ

進路を選ぶ際、あなたは、「自分の中で得意なもの」と「好きだけれど不得意なもの」のどちらを選ぶでしょうか。自閉スペクトラム症の子は、あえて苦手なことにチャレンジしようとする場合があり、心配になることがあります。好きだからといって、不得意なところに突き進もうと考えると、その先は苦しい道になるかもしれません。
自分の特性を知り、よく考えて進む道を見定めましょう。あれもこれもと欲張るよりも、やるべきことに優先順位を付けてこなしていくことも大切です。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

県立広島大学に関心を持ったあなたは

県立広島大学は、教育、研究、地域貢献、国際交流のいずれにおいても公立大学として一級の大学になっています。「主体的に考え、行動し、地域社会で活躍できる実践力のある人材の育成」を目標に、教養教育では、大学4年間の学士課程教育を通じて実施する「全学共通教育科目」を設定するとともに、専門教育においては、教養教育との連携を図りながら、「専門科目」を系統的に設定することにより、バランスのとれた教育内容を提供していきます。