当事者研究で自分を観察する
相手のことより、まず自分を知る
ソーシャルワーカーとは、病気や障がい、老化などによって生活に問題を抱える人やその家族に対して支援を行う人のことです。支援を行うというと、「相手のことを知らなきゃ」と考えるかもしれませんが、実はまず自分のことを知ることが大切です。対人援助職の人は、対象者と関わるとき、自分がどんなときに怒るのか、涙を流すのかなどを知っておくことが重要です。ソーシャルワーカーは「道具としての自分」の特性を知り、研ぎ澄ますことが求められます。
当事者研究で自分を深く知り、他者を受容する
自分を知るための手法として、「当事者研究」というものがあります。自分の苦労したことや苦手なことをグループ内で対話することで、自分自身に起こっていることを外に置いて眺める(外在化)するのです。これを「自己覚知(かくち)」といいます。例えば「私は人前で話すことが苦手です」と話したら、ほかのメンバーから「どのくらいの人数なら大丈夫?」「緊張すると体はどんな反応をするの?」などと尋ねられることで、自分に起こっていることを掘り下げていきます。こうした対話を行うことで、自分のことを深く知ると同時に、生きやすくもなります。参加した人の多くは「こんなことを話してもいいんだ」とほっとします。自分の苦労をみんなに知ってもらうことで、受け入れてもらえる安心感が得られ、その経験が実際に支援を行うときに相手を受容することにつながるのです。
精神医療や家庭でも使われる当事者研究
当事者研究の手法は、さまざまな分野で使われています。精神医療分野では、発達障がいや統合失調症の患者さんが、どう感じているのか、どんなことに苦労しているのかを知る手がかりとして活用されています。また家庭内では保護者が子どもを理解するツールとして活用が始まっています。
人を援助するとは、まずは自分を知ることから始まります。社会の大きな問題を解決するために、まずは当事者研究で自分自身の成り立ちに光を当てるのです。
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先生情報 / 大学情報
北海道医療大学 看護福祉学部 福祉マネジメント学科 講師 奥田 かおり 先生
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