当事者研究で自分を観察する

当事者研究で自分を観察する

相手のことより、まず自分を知る

ソーシャルワーカーとは、病気や障がい、老化などによって生活に問題を抱える人やその家族に対して支援を行う人のことです。支援を行うというと、「相手のことを知らなきゃ」と考えるかもしれませんが、実はまず自分のことを知ることが大切です。対人援助職の人は、対象者と関わるとき、自分がどんなときに怒るのか、涙を流すのかなどを知っておくことが重要です。ソーシャルワーカーは「道具としての自分」の特性を知り、研ぎ澄ますことが求められます。

当事者研究で自分を深く知り、他者を受容する

自分を知るための手法として、「当事者研究」というものがあります。自分の苦労したことや苦手なことをグループ内で対話することで、自分自身に起こっていることを外に置いて眺める(外在化)するのです。これを「自己覚知(かくち)」といいます。例えば「私は人前で話すことが苦手です」と話したら、ほかのメンバーから「どのくらいの人数なら大丈夫?」「緊張すると体はどんな反応をするの?」などと尋ねられることで、自分に起こっていることを掘り下げていきます。こうした対話を行うことで、自分のことを深く知ると同時に、生きやすくもなります。参加した人の多くは「こんなことを話してもいいんだ」とほっとします。自分の苦労をみんなに知ってもらうことで、受け入れてもらえる安心感が得られ、その経験が実際に支援を行うときに相手を受容することにつながるのです。

精神医療や家庭でも使われる当事者研究

当事者研究の手法は、さまざまな分野で使われています。精神医療分野では、発達障がいや統合失調症の患者さんが、どう感じているのか、どんなことに苦労しているのかを知る手がかりとして活用されています。また家庭内では保護者が子どもを理解するツールとして活用が始まっています。
人を援助するとは、まずは自分を知ることから始まります。社会の大きな問題を解決するために、まずは当事者研究で自分自身の成り立ちに光を当てるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

北海道医療大学 看護福祉学部 福祉マネジメント学科 講師 奥田 かおり 先生

北海道医療大学 看護福祉学部 福祉マネジメント学科 講師 奥田 かおり 先生

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精神保健福祉学

先生が目指すSDGs

メッセージ

自分を大切にしましょう。日本の若者は周囲に気を遣いすぎて、感情を内に抑えているケースが多々あります。もっと自分の考えていること、感じていることを表現しても大丈夫です。
2020年のデータによると、OECD(経済開発協力機構)とEU加盟国の中で、日本の子どもの幸福度は38カ国中20位とかなり低くなっています。若い人たちは国の宝ですから、もっと大切にされ尊重される文化になってほしいです。まずはあなた自身が自分のことを大切にいたわってあげてください。あなたはかけがえのない存在なのですから。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?

北海道医療大学に関心を持ったあなたは

北海道医療大学は、薬学・歯学・看護学・臨床福祉学・臨床心理学・理学療法学・作業療法学・言語聴覚療法学・臨床検査学の6学部9学科を擁する、医療系総合大学です。9つの学科と歯学部附属歯科衛生士専門学校が密接にかかわり合い、「チーム医療」に最適な教育環境を提供しています。当別と札幌あいの里、2つのキャンパスには約3,500名が集い、学生の約3割は道外出身です。2万人を超える卒業生が、医療の担い手として全国各地で活躍中。本学に寄せられる求人は年間約30,000人にも及び、高い就職率を誇っています。