企業はなぜ買収防衛策を廃止した? 経済学で社会の謎を解く!
経済学で社会を読み解く
経済学は、「不可解」に思える社会の現象を説明する「理論」を追究します。例えば株式会社の買収と防衛策の関係を考えてみましょう。不況になると、経営を立て直すために企業を再編したり買収したりする動きが活発になります。すると企業は買収される事態を防ぐための対策を考えるでしょう。強圧的な買収者が現れたときに株式を追加発行して、買収者の持つ株の割合を減らして力を弱められるようにするなどの方法です。しかし、こうした防衛策を設定する企業は、実はそれほど多くはありません。
買収防衛策はなぜ増えなかった?
便利に見える買収防衛策なので、日本で買収防衛策が導入されはじめた当時、多くの企業がこれを利用すると言われました。しかし、経済学のモデルを使って計算すると、導入企業は必ずしも多くないことが予想されます。買収防衛策のメリットは限定的だからです。買収の脅威を避けることはたしかに重要ですが、事業内容を絞って資源を集中するなど生産的な経営で会社の利益を大きくする方が、経営者にとって有利です。実際に買収防衛策を導入した企業は限られていますし、導入した防衛策を廃止する企業も出ています。
不況を打開するデザイン
日本では2020年代に入っても長期不況が続いており、企業買収は高い水準にあります。不況の原因は多数ありますが、高付加価値化の対応不足は大きなポイントです。日本企業は故障が少ない高機能製品を作りますが、価値を高めるようデザインで存在を示すことも重要なのです。ただし付加価値の高いデザインの条件は曖昧です。「社会の不可解なもの」として経済学で分析して、より具体化したいと考えて、現在、ファッション産業がデザインを「生み出す仕組み」と「受容のあり方」を研究しています。この産業は、ファストファッションを含めて、ダイナミックに変化しています。短期的な流行で終わらないデザインや流通の仕組みが構築されれば、高付加価値の生み出し方も理論化できるでしょう。
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弘前大学 人文社会科学部 経済システム講座 教授 飯島 裕胤 先生
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