人間の仕事はAIに奪われるのか? 労働経済学で検証する
技術革新と新しい仕事の誕生はセット
「2030年に日本の労働人口の49%が人工知能やロボットに代替される」という予測データが2015年に発表されて以来、「AI=脅威」と考えられてきました。さらに対話型AIの登場によって、AIに仕事を奪われる世界が現実になると恐れる人が増えています。しかし、18世紀後半の第一次産業革命以来、技術革新が新たな仕事を生み出す歴史は繰り返されてきました。AIやICTも、スマホアプリの開発者やYouTuberなど新しい職業を生み出しています。技術革新と労働人口の関係を分析する研究においては、AIに代替される仕事よりも人間の新しい仕事の方が多いと考えられます。
仕事の中身は数値化できる
労働経済学は労働者の行動を分析する学問です。中でも、職業の具体的なタスク(職務)を3つの指標で数値化する分析手法「タスク・アプローチ」が昨今注目されています。3つの指標とは、創造性やコミュニケーション能力が求められる「抽象的タスク」、マニュアル化された作業を繰り返す「定型的タスク」、体を使って機械などを操作する「手仕事タスク」です。この3つのタスクの構成比を職業ごとに数値化して比較すると、抽象的タスクの比率が高い職業ほど「人間にしかできない=AIには代替できない」ことがわかってきました。
人間くさい能力を磨いてAIと共生
定型的タスクや手仕事タスクはAIやICTの方が得意ですから、置き換えることで効率よく正確に処理できます。余った時間や力を人間にしかできない「抽象的タスク」にあてれば、より豊かな創造性や専門性を発揮できます。個人が持つアイデアやセンスをいかしたクリエイティブ力、柔軟なコミュニケーション力、複雑な社会的課題を解決する力などは、AIにマネができない「人間くさい」能力です。人間はどんな能力を磨き、AIにサポートを受けるべきタスクは何かを見極める視点を持つことで、「人間とAIが共生する豊かな社会」を創造していけるのです。
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