「暴力」により影響を受けた家族関係の広い意味での「回復」を
加害者の「暴力をやめたい」を支える
DV(ドメスティック・バイオレンス)は、家庭内における親密な人間関係の中での暴力です。「加害者」は、経済的に優位などの理由で男性が多く、パートナーだけでなく子どもに暴力が振るわれている場合もあります。また児童虐待防止法では、家庭環境でDVが存在すること自体が子どもへの心理的虐待とされています。日本では1990年代から、そのような被害者を支援する方法の1つとして、加害者自身が自分と向き合い、「暴力に頼らない関係づくり」を体得していくためのプログラムが実践されるようになりました。
時には「生きづらさ」からの解放につながることも
10人程度のグループで行われるこのプログラムでは、例えば週1回で1年間、「男らしさ、女らしさ」に関する思い込みやDVによって与えた家族への影響について学んだり、グループで経験を共有したりしながら自らの振る舞いについて繰り返し考えていきます。プログラムの主催者や当事者へのインタビュー・アンケート調査から、プログラムを継続する人は、パートナーや家族の反応など家族間のコミュニケーションを重視していることがわかってきました。中には職場でも人間関係が良くなったり、「男らしさ」という縛りからの解放、つまり「生きづらさ」からの解放を実感する人もいます。
加害者と被害者という家族関係
プログラムを受ける過程では、さまざまな学びを得て家庭内で事を起こさなくなった加害者が、逆に家族から反撃かのような強い態度を取られることがあります。これは家族関係にDVが与える影響の深さの表れであり、同時に家族が加害者に対して強い態度を取れるほど安心できるようになったという側面もあると言われています。
家族の中で加害者と被害者という関係になっても、別れる、離れるという選択ができない場合があります。そのような中で、家族関係を継続しながら安心した生活環境をめざしていくためには、パートナーの声も聞きながら被害者支援のあり方を考えていく必要があるのです。
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先生情報 / 大学情報
関西学院大学 教育学部 教育学科 幼児教育学コース 教授 髙井 由起子 先生
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