「キャリアパス」は福祉人材育成の羅針盤
「キャリアパス」が求められてきた
福祉サービスは、利用者の生活の質を高める手助けをするとともに地域共存といった社会的な側面も求められ、多面的な支援を行う高度なスキルが必要となります。そのためには福祉サービスの担い手の人材育成が重要な課題であり、サービスを提供する組織だけに任せるのではない一律の指針が求められてきました。人材育成には、めざす職務に必要な求められる能力や条件などを明確化した「キャリアパス」が欠かせません。しかし、形ある製品と異なり、サービスの基準が言語化しづらいことから、福祉分野ではキャリアパスの導入が遅れていました。
具体的な行動目標
そこで、学術界からグラフィカルな(図式化された)キャリアパスが提案されました。縦軸に一般職・管理職などの段階、横軸に専門性や組織性に関する学習領域を示すカリキュラムという構造です。それぞれの項目の交点にはその時点での目標を書きます。ただし抽象的な表現では言葉のとらえ方が人によって異なり、指導や評価が一貫しない危険性があります。そのため、「法人内のほかの部署を把握している」「ボランティアの受け入れができる」などの具体的な行動目標を書くようにします。さらに、職務を数段階に細分化することにより、目標達成の機会を増やし、職員のモチベーションの維持を図るという工夫も盛り込めます。また、キャリアの多様性を示す場合は、進むコースを選択できるように縦軸を複線型にしてキャリアパスを作成します。
学問としてスタートした福祉人材育成
キャリアパスは管理職側にもメリットがあります。評価基準があいまいな場合は主観的な評価になりがちですが、具体的な行動目標があることで客観的な指導や評価につながります。
現在の日本は福祉サービスの人材育成に力を入れており、積極的に人材育成をしている職場を評価する「福祉人材認証評価制度」が始まっています。福祉人材育成は学問としては始まったばかりであり、今後の研究の広がりが期待される分野です。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
高崎健康福祉大学 健康福祉学部 社会福祉学科 教授 永田 理香 先生
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