人の役に立たないウイルスの生態を探る

ウイルスには悪くないヤツもいる
ウイルスは動物、植物に寄生して病気などを引き起こす「悪いヤツ」(病原体)、というのが多くの人のイメージでしょう。しかし、害を及ぼすウイルスとは別に、病気などを引き起こさない無害なウイルスも存在することはあまり知られていません。無害なだけでなく、動物や植物に寄生することでプラスの役割を果たすウイルスがいることも最近になってわかってきました。
海の中から800超の新種が見つかった
ウイルスにはDNAウイルスとRNAウイルスの2つのタイプがあります。ウイルスは非常に小さく、かつては、原因のわからない病気があり、調べてみたらウイルスが見つかった、というケースがほとんどでした。しかし、今はまったく異なった方向からのウイルス探しが進んでいます。
例えば、北太平洋の5地点から海水を合計10リットル採取したところ、800種類以上の新種のRNAウイルスが発見されました。しかも、そのほとんどが生物に害を及ぼさないものだと考えられています。RNAウイルスだけでも10万種類を超えると推測されており、それをはるかに超えるスケールで存在する可能性も指摘されています。
生命誕生にウイルスが関わる可能性
プラスの役割を果たすウイルスの中には、植物の成長を促したり、ストレスへの耐性を高めたりするものが見つかっています。私たち人間にとって直接的に有益なウイルスが発見される日もそう遠くないでしょう。
その一方で、生命誕生にウイルスが関わっている可能性も出てきました。「最初の生命はどのように誕生したか」は、さまざま議論がなされていますが、地球上の過酷な環境で生まれたという説も有力視されています。実は、高温の温泉など生物にとって過酷な環境でもウイルスが続々と見つかっているのです。もしかしたら、生命誕生にウイルスが関わっているかもしれず、多くの研究者がウイルスと生命の起源の関係についての研究を進めています。
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先生情報 / 大学情報

筑波大学 生命環境学群 生物資源学類 助教 浦山 俊一 先生
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