講義No.12486 看護学

子どもたちを守る看護の実現に、求められる「技」の伝達

子どもたちを守る看護の実現に、求められる「技」の伝達

看護の現場で培われる「技」

小児看護の現場には、経験を通して身につく優れた看護の技があります。例えばぜんそくの子どもに対応したとき、経験の豊富な看護師はすぐに症状を和らげることができても、慣れない看護師は処置に時間がかかってしまう場合があります。こうした技は言葉で表すことが難しく、「経験すれば身につく」と言われることが多いのですが、多くの看護師が効果的に技を共有できれば、病気の子どもを守る小児看護の質はよりよくできるはずです。

技の伝達に必要な要素

技を伝達するためには、適した環境と手段が必要です。その適した環境のひとつが、実は「雑談の場」にヒントがあります。誰もが気軽に話すことができ、自分の発言を受け入れてもらえるという安心感や信頼感があると、技を伝達するための手段がうまく機能するのです。また技を伝達するための手段は、実際にやってみせることや、図を使った説明が有効です。言葉で表すことが難しい部分を「プラスチックのような」など身近にある別のものに例えると、イメージしやすくなります。また、「ぎゅーっとした感触」など、体で得た感覚をそのまま伝えることも効果的です。これらは医学用語ではないので普段は発言しにくいですが、安心できる雰囲気の中だと発言しやすくなります。このことから、環境を整えることで、技の伝達をしやすくなると期待されています。

看護の技を発揮する環境づくり

看護師がどの病院に行っても技を発揮できるような環境づくりも求められています。せっかく優れた技を持っていても、転任先の病院にある独自のルールが看護師のポテンシャルを制限してしまうこともあり得ます。ここで「雑談の場」に存在するような気軽に話せて安心できる雰囲気があれば、転任先のルールを質問しやすくなったり、技を発揮するために必要な条件を伝えやすくなったりすることが期待できます。このような環境はその場にいるみんなでつくるものであり、お互いに学び合うことができる場となるため、学ぶための環境づくりも大切にされています。

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神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 看護学科 教授 川名 るり 先生

神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 看護学科 教授 川名 るり 先生

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小児看護学、教育心理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高校時代、「何に興味があるのかわからない」と悩んだことがありました。もし、あなたも「将来の進路や夢がわからない」と悩んでいる場合は、とにかくさまざまな世界を見てほしいです。新しい世界に触れているうちに、楽しいと感じること、気持ちが穏やかになることなどが見つかるかもしれません。すでに関心を持っているテーマがあれば、それを大切にしてほしいです。あなた自身の身体や心で感じた楽しい時間、穏やかな時間を手がかりにして、一歩踏み出せたらと願っています。

先生への質問

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神奈川県立保健福祉大学では「ヒューマンサービス」を使命とし、人材育成、教育・研究活動、地域貢献活動を行っています。
ヒューマンサービスとは、一人ひとり人格を持った大切な人として生かされ、生きがいを持ち、その人らしく生きられるように、他の人を支援していく理念を言います。
すべての人がその人らしく生きていくことができる未来のために、私たちはすべての人に真に向き合い支えることのできる、心と知識・技能を兼ね備える人を育み、新時代にふさわしい保健・医療・福祉の未来を切り拓きます。