虐待を減らすために 高校時代に親になることを考えるプログラム

予防を考える小児看護
看護学には、小児看護という分野があります。子どもやその家族も含めて、いかに健やかに成長発達できる環境をつくるかを考える学問です。疾患の有無に関わらず、健康な子も含めたすべての子どもたちを対象にします。
現在の課題の一つは、年々増加傾向にある児童虐待です。身体的・心理的な暴力だけでなく、子どもへの不適切な養育や関わりという意味の「マルトリートメント」を防ぐことも注目されています。マルトリートメントは、子どもの話を聞かない、けなすなども含まれ、どの家庭でも起こりうることです。
高校生向け「親になる」プログラム
この要因として、近年は乳幼児と触れ合う機会が減り、子どもと関わる経験がないまま親になることが指摘されています。育児不安になりやすく、虐待やマルトリートメントに陥りやすくなるのです。課題解決に向けて「親になる前から始める、子ども虐待防止支援プログラム」が開発され、高校の家庭科の授業で実施されています。実際に乳幼児を子育て中の親子とふれあって話を聞き、親になる意識を育むことを目的としています。
親子の中には楽しく子育てしている人もいれば、いろいろな事情を抱えている人もいます。高校生は、そうした生の声を聞くことで現実の子育てを知り、自分の将来を考えることができます。同時にさまざまな子育てや、親の思いを知ることにもつながります。
つらい思いにも気づく
プログラムを通じて、男子も含めて将来が楽しみになる生徒もいれば、そうでない生徒もいます。普段の生活では気づきにくいのですが、幼少期につらい思いをした生徒が一定数いて、目を背けたりします。この機会に教員がそれに気づき、生徒をケアするきっかけにもなっています。何より、親になる前に自分の気持ちに気づくことも大切です。
このプログラムは行政や教育機関、福祉機関などの協力を得て運営されています。近い将来、子どもたちが笑顔で健やかに成長できる社会の実現に向けて、活動が広がりつつあります。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
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先生情報 / 大学情報

石川県立看護大学看護学部 看護学科 母性・小児看護学講座 准教授千原 裕香 先生
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