素因数分解の仕方は何通り? 数学上の大問題を解くカギとは
「素因数分解の一意性」とは?
中学で勉強した「素因数分解」の性質とはどういうものでしょうか。一つは、整数が「素数(約数が1とその数自身のみ)の掛け算に分解できること」、もう一つは、その「表し方が一通りであること」です。
例えば6を素因数分解すると、6=2×3です。そして、数字を並べる順序を考慮しなければ、これ以外の表し方はできません。この性質は、すべての整数の素因数分解について当てはまります。そして、素因数分解の答えが一つであることを、「素因数分解の一意性」と言います。
素因数分解が二通りになる世界
では、この素因数分解を整数以外の数に広げて考えてみたらどうでしょうか。例えば、高校で勉強する虚数単位「i=√-1」を使って「整数」の範囲を広げると、6=2×3=(1+5i)×(1-5i)とも表せます。「約数が1とその数自身のみ」である数に分解することはできても、答えが二通りになります。「整数」という体系の中にある数に関しては成り立っていた素因数分解の一意性が成り立たなくなりました。
数には定義によっていろいろな性質の体系があり、このように素因数分解の一意性が成り立たない体系は無数にあることが証明されています。一方、整数以外で一意性が成り立つ体系も無数にあると考えられていますが、実はそちらはまだ証明されていません。数学上の大問題とされ、多くの研究者が証明に取り組んでいます。
数学史に残る証明を夢見て
その証明の理論を組み立てる上で重要な概念の一つが「イデアル類群」で、「数の体系」によって定まる有限集合です。イデアル類群が大きいほど「一意性」が成り立ちにくくなることが知られています。また、答えが何通りになるか、何個の数に分解できるか、など、「一意性」に関する性質が、イデアル類群を用いて研究されています。一方で、研究を進めると新たな問題やテーマが現れ、整数論の対象はどんどん広がっています。
そうした創造的な研究が、将来、数学史上の大問題の証明という大きな業績につながる可能性もあるのです。
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