感染拡大も口コミの伝わり方も! 「拡散」を予測する数理モデル

感染拡大も口コミの伝わり方も! 「拡散」を予測する数理モデル

「拡散」を予測する数理モデル

世の中には「拡散」という現象があちこちに見られます。例えば水に落としたインクの拡がり、感染症の拡大、口コミ情報の拡がりなども、すべて「拡散現象」です。一見ランダムな動きですが、こうした拡散現象も方程式などで数学的に現象を表現する「数理モデル」を作ることによって、どんなスピードで、どこまで拡がるかなどを予測できます。新型コロナウィルスの感染拡大予測も、数理モデルを使って行われていました。

外来種問題を数理モデルで考える

数理モデルが役立つ例として、生物の外来種が在来種の生息域を侵食しながら拡がっていく問題があります。最近では、海外からのコンテナに潜んで流入したヒアリという外来種のアリが増えて被害が出ています。
この拡大の予測をするために、氷が水に溶ける過程を記述した「ステファン問題」という定式化を応用しました。ステファン問題は「自由境界問題」の一種であり、水と氷の境界の「不規則な時間変化」を数式で表したもので、微分方程式を用いて記述されます。外来種と在来種の生息域の境界を水と氷の境界になぞらえて、新たに繁殖力や競争といった生物の特性を加味することで、新しい数理モデルが出来上がりました。

身近な数式も数理モデルに!?

この問題で使われた「微分方程式」は、極限まで短くした時間当たりの変化量を見ていくことで、変化の法則性を表現するという発想です。しかし微分方程式だけではなく、どんな数学の分野でも数理モデルを作ることができます。例えば「確率」です。前述の例なら、「外来種の生物が○方向に移動する確率が△パーセント」など、確率を組み込んで予測するアプローチをとることもできるのです。
ほかにも統計学やAI・機械学習など、数理モデルの研究にはさまざまな分野の手法が用いられています。私たちの身近な数式も、意外なところで数理モデルと関係しているかもしれません。変化の激しい時代、勘や経験ではなく、数学的な手法で変化を予測して、意思決定することが求められているのです。

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関東学院大学 理工学部 理工学科 数物学系 講師 兼子 裕大 先生

関東学院大学 理工学部 理工学科 数物学系 講師 兼子 裕大 先生

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解析学、応用数学

メッセージ

大学で数学を勉強したいと言うと、親から「数学を勉強して何になるの?」などと聞かれることもあるようです。しかし、数理モデル、データサイエンス、AIなど、数学は世の中のいろいろなところで役に立っています。企業でも、数学の知識がある人材が強く求められるようになってきています。数学に限りませんが、未知のことに恐れて慎重になり過ぎずに、興味があるならぜひチャレンジしてみてください。その道で自分に何ができるか追求していれば、必ず助けてくれる人はいるはずですし、道は開けるものです。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

関東学院大学に関心を持ったあなたは

1884年(明治17年)、関東学院は横浜山手に神学校として創立されました。長い歴史と伝統をもつ関東学院はキリスト教の優れた思想、芸術、奉仕の精神を礎に、校訓「人になれ 奉仕せよ」のもと広く世の中に貢献できる学問・知識を身につけた有能な人材の育成を目指してきました。現在では、文理にわたる学部を擁する総合大学へと発展。伝統に裏打ちされたキャンパスライフサポート、学修サポート、キャリアサポートの3つのサポート体制で学生一人一人に合わせた支援をこれからも行っていきます。