自然なライティングで拡張現実のリアリティを追究
拡張現実をよりリアルにするライティング
現実世界の映像にCG(コンピュータグラフィックス)を重ね合わせるAR(拡張現実)の技術では、CGを違和感なく見せることが必要です。そのために重要なのが自然なライティングの再現です。実際の画像を機械学習で処理し、どこからどのような光が当たっているかを推定し、CGに反映させます。これで、例えば家具を新調するときなどに、購入前に家具のCGを部屋の画像に重ねてイメージを確認できます。その部屋の明かりでの見え方がわかるので、実際に家具が届いてから「思っていたのと違う」というようなことがなくなるでしょう。
虹色に光る構造色で光源の位置を推定
自然なライティングを再現するには、機械学習で画像を学習させて、光源の位置を推定する方法や、画像を撮影するときに手掛かり(マーカー)として金属の球や形のわかっているフィギュアなどの物体を置き、その物体に当たる光の様子から、光がどの方向から来るのか推定する方法があります。そのマーカーとして有効と考えられているのが、CDの裏側やチョウの羽のように、光を当てると虹色に光る「構造色」を発色する物質です。光源に依存して構造色の発色パターンも変わるため、構造色の変化をとらえることで、光源の位置を推定することが可能です。構造色を使ったマーカーは平面の印刷物として作れるので、取り扱いやすさの点でも優れています。
光源のスペクトルも推定可能
構造色を用いることのより大きな利点は、光のスペクトル(波長の順に並んだ帯状の像)が得られることです。すなわち、当たる光の種類によって構造色の発色が変化するので、同じ白い光でも蛍光灯であるのか白熱球であるのか、光源の種類を見分けることができます。現時点では4つの種類の光を見分けるところまで開発が進んでいますが、判別できるのは機械学習で訓練した種類の光に限られています。今後は、訓練していない光源にも対応できるようなモデル化の方法、また同時に2種類以上の光があったときの判別方法の確立が課題です。
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大阪大学 大学院情報科学研究科 情報システム工学専攻 教授 浦西 友樹 先生
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