乾燥地に強い樹木「メスキート」の賢い水利用戦略
乾燥地に強いメスキートの水利用戦略
気温が高く、水が少ない乾燥地では植物、中でも樹木はどのように水を利用しているのでしょうか。メスキートという南米原産のマメ科の低木があります。耐乾性・吸水能力が高く、繁殖力が強いため、サハラ砂漠の砂丘の移動をくい止める目的で植林されてきた樹木です。この取り組みの観測は、砂漠気候のスーダンの首都ハルツームで行われています。雨季は7、8月です。2012年の最初の降雨は7月終わり、2回目は8月初旬、3回目は8月下旬にありました。
雨が降ると地下水ではなく地表近くから吸水する
観測は、メスキートの幹に穴を開け、水分センサーを設置して「樹体内の水分量」と幹の中を上方向に流れる水の速さ「樹液速度」を計測しました。土壌は、深さごとに土壌水分量を計測しました。
1回目の降雨では、深さ5cmの土壌水分に変化がありましたが、樹木のデータに変化はありませんでした。しかし、2回目・3回目の強い降雨では、深さ15cm、30cmの土壌水分に変化があり、樹体水分も上昇しました。この樹木は根の生育スピードが速いため、地下水から水を吸い上げていると考えられてきましたが、雨が降ると地表近くからも吸水していることがわかりました。
土壌が乾燥すると昼に葉を閉じて水の消費を抑える
樹液速度も降雨があると上昇しました。樹液速度は樹体内の水分量と違って、1日ごとという短い時間でも大きく変化し、日の出とともに上昇を始め昼にピークを迎えました。しかし、土壌が乾燥してくると日射が強い正午頃は一時低下するようになります。これは、メスキートが葉を閉じることにより水の無駄な消費を抑えるためです。乾燥地に強い樹木は、このように優れた水の利用戦略を持っています。これは、ほかの種との繁殖力の違いという結果になって表れます。実はメスキートには、在来種を駆逐するほどの強い繁殖力があり、現在スーダンでは外来侵入種として大きな問題となっています。植物の生育を考えるうえで、土壌と植物の関係を調べることは大変重要なのです。
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先生情報 / 大学情報
鳥取大学 農学部 生命環境農学科 国際乾燥地農学コース 准教授 齊藤 忠臣 先生
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