独自の発展を遂げながら、「つながり」もあった中南米の文明
中南米は「遅れていた」わけではない
メキシコ以南の中南米では、16世紀にヨーロッパ人に征服されるまで古代的生活を続けていました。そのため、いわゆる「旧大陸」に比べて「文明が遅れていた」と考えられがちです。しかし、実際は「独自の発展をしていた」と考える方が自然でしょう。例えば旧大陸の文明が穀物の栽培を基盤としていたのに対し、南米のアンデス文明では根菜を基盤とした社会を形成しました。また、中米では主食こそ雑穀でしたが、家畜にできる大型動物がいなかったため、農耕やピラミッドの造成でさえも人力で行っていました。
中米と南米は「つながっていた」
中南米の文明が独自の発展を遂げた理由の一つに、日本における中国や中東のような、影響を与える文明が東西の位置に存在しなかったことがあります。中米と南米のように南北の関係にあると環境や季節が異なることも多く、積極的な交流は難しいのです。それでも海洋ルートにより交流が行われていたようで、メキシコ西部を調べると、ブーツ型竪坑墓や毛のない犬など南米と共通するものや南アンデスの冶金技術など、南米由来の文物が伝わった痕跡があります。逆に中米の主食だったトウモロコシが南米に伝わり、酒を造る材料となっていたようです。
手つかずの遺跡に秘められた可能性
ただ、海洋ルートは陸上と違い痕跡が残りにくいため、つながりを見つけるのは困難です。一方、中南米の文明が16世紀まで残り、その後も立地的に都市を築きにくかったことは、研究上の利点でもあります。中南米には手つかずの遺跡も多く、ジャングルや砂漠にはまさに映画『インディ・ジョーンズ』に出てくるような未調査の遺跡も存在しています。サソリや毒蛇もいて現代人が生活するには環境が厳しく、発掘も困難ですが、比較的アクセスのいい遺跡にも、重要な手がかりが眠っている可能性があります。それらを調べることで、実は想定より何百年も文明の形成が早かった、かなり離れた地域間の交流があったなど、中南米の歴史がダイナミックに変わる発見があるかもしれません。
参考資料
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東海大学 文学部 文明学科 教授 吉田 晃章 先生
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