生態が謎に包まれたサメを守るために
謎が多いサメの生態
サメの仲間には、外洋性の大型のサメや深海にすむ小型のサメなどいろいろな種類がいます。サメは成魚になるまでに時間がかかる生き物ですが、現在幼魚の数が少なく、世界的に減少傾向にあります。そのため保護の対象とされているものの、サメの多くは漁業で利用されていないこともあって、その生態研究はまだ進んでいません。そこで、適切な管理をするために、サメの食性や、ほかの生物との関わり、性成熟するまでの期間などの生態や分布についての研究が行われています。
フィールドワークでサメの生態を調査
研究では定置網や底引き網の漁船に同乗し、網にかかったサメを譲り受けて、体の大きさや成熟状態、食べたものなどを調査します。サメの年齢を知るヒントは、木の年輪のように脊椎骨にできる「輪紋」です。また、底引き網でサメと一緒に獲れた生き物から、サメのエサ環境や、ほかの深海生物の生態、それらとサメとの関係を調べることができます。これまでの研究で、深海に生息するよく似た種類のサメは、本来競争関係にあるにもかかわらず、大きさによって水深ごとにすみ分けしていることがわかりました。こういった生態についての情報を漁業に利用すれば、サメの保護に役立てることができます。
環境科学的な観点からの研究
サメの生態調査からは、環境問題との関係も見えてきます。プラスチックや野菜くずなどのゴミを食べてしまった深海のサメの割合は、種によって約30%にのぼります。またサメは高次捕食者であることから、海洋の汚染物質が高濃縮されて体内に蓄積されるため、サメの肝臓から油を抽出し、PCBやDDTなどの汚染物質を分析する環境科学的な研究も行われています。
サメの減少を食い止めるためには今後さらなる保護対策が必要で、研究も非捕殺的な方法が求められます。捕獲したサメのおなかの中に子どもがいた場合には人工哺育して海に返す方法や、そもそも捕獲しなくても調べられるように水中カメラを使った観測方法などが検討されています。
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先生情報 / 大学情報
東海大学 海洋学部 海洋生物学科 准教授 堀江 琢 先生
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先生への質問
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