重篤化しやすい蕎麦も? 食物アレルギー治療の新たな可能性
アレルギーは食べて治す!?
食物アレルギー患者の増加が、社会的な問題となっています。卵や牛乳のようにアレルギーが比較的治りやすい食材は、医師の指導の下で原因となる成分を少しずつ食べて身体を慣らしていく免疫療法が有効です。しかし蕎麦(そば)のような食材には、この方法は向いていません。量を少しでも間違えるとアナフィラキシーショックなど、危険な症状が起こる可能性があるからです。ただし研究によって、アレルギーの原因分子に加工をすれば免疫療法の適用の可能性があるとわかってきました。
そばのアレルギーを弱めるには
手法のひとつが、原因分子を異なる分子で覆って力を弱める「マスキング」です。アレルギーの原因となるそばのたんぱく質をリン酸基でマスキングすると、免疫療法に使える程度に力を制御できます。糖鎖などほかの分子でのマスキングも試されましたが、アレルギーを抑えられる代わりに下痢などの副反応が懸念されました。リン酸基を使った場合は副反応がなく、さらにリン酸基自体が持っている免疫調整機能も引き出せるため、最適な素材だといえます。
アレルギー患者への反応を調べるために、血液から採取できる「血清」を使って実験が行われました。そばのたんぱく質そのままでは、血清にある抗体が強く結合して抗原抗体反応が起こります。しかしリン酸基でマスキングしたそばのたんぱく質に対しては、抗体の結合がかなり抑えられることが明らかになりました。
ほかの食物アレルギーにも有効?
治療効果を高めるためには、そばのたんぱく質をさらに詳しく分析する必要があります。たんぱく質はアミノ酸が連なってできています。特にどのアミノ酸に免疫細胞が反応してアレルギーを引き起こしているのかがわかれば、ピンポイントでマスキングして効果を高められるでしょう。
また、ほかの食材もたんぱく質分子内に同じ構造のアミノ酸を持っている場合があるため、同様にリン酸基でアレルギーの原因分子をマスキングすれば治療が可能になると期待されています。
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信州大学 農学部 農学生命科学科 生命機能科学コース 教授 片山 茂 先生
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