目を潤すだけじゃない! 隠された「まばたき」の働きとは

目を潤すだけじゃない! 隠された「まばたき」の働きとは

まばたきは脳の情報処理に関係

「まばたき」の役割の一つは目を潤すことです。目を潤すには1分間に3回ほどで十分ですが、実際は1分間に約20回もの自発的なまばたきをしています。まばたきの回数は、緊張や退屈で増加するなど、人の精神状態によって変化します。このことから、まばたきは脳の情報処理と関係している可能性が考えられます。

まばたきで情報を分節化

被験者の人たちに映像を見てもらい、まばたきのタイミングを調べる実験が行われました。その結果、映像の句読点的な切れ目で被験者のまばたきが同期することがわかりました。つまり、句読点のタイミングは人と人との間で共有されており、まばたきによって視覚情報を適切に区切って脳に取り込んでいると考えられます。
まばたきのときに脳で何が起きているのかを調べると、気持ちが内側に向いているときに活動する「デフォルト・モード・ネットワーク」という領域と記憶の中枢である海馬が活発化していました。逆に、外界への注意を制御する「注意のネットワーク」は活動が減少していました。また体では、まばたきで一時的に心拍数が上昇し、副交感神経優位から交感神経優位への入れ替わりがみられます。これらのことから、まばたきは脳および体の状態をリセットし、それによって情報を分節化しているのではないかという仮説が立てられます。

コミュニケーションの手助けも

さらに、まばたきはコミュニケーションにも役立っている可能性があります。話し手と聞き手のまばたきのタイミングを調べたところ、話し手が会話の切れ目でまばたきした直後に聞き手もまばたきをすることがわかりました。一方、コミュニケーション障害がある自閉症の人については、相手とまばたきが同期していません。会話の切れ目を共有できないことがコミュニケーションの障害につながっていると推察されます。
こうした人間の体についての研究は、体を持たない人工知能とのよりよいかかわり方を示唆してくれるものとしても期待されています。

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大阪大学 大学院情報科学研究科  教授 中野 珠実 先生

大阪大学 大学院情報科学研究科 教授 中野 珠実 先生

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メッセージ

オリジナリティのある研究をするためには、自分の経験をもとに自分の頭で考えていくことが求められます。これは研究に限らず社会に出て何かをする場合にも当てはまるでしょう。インターネットですぐに情報が得られる時代ですが、やはり自分の体を通じた経験こそがのちに血肉となるものです。受験勉強で忙しいかもしれませんが、あとで生きてくるのは受け身の勉強よりもユニークな人生経験です。勉強の合間に時間を見つけて、小さなことでも趣味的なことでもよいので、自分だけの体験をして引き出しを増やしましょう。

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自由な学風と進取の精神が伝統である大阪大学は、学術研究でも生命科学をはじめ各分野で多くの研究者が世界を舞台に活躍、阪大の名を高めています。その理由は、モットーである「地域に生き世界に伸びる」を忠実に実践してきたからです。阪大の特色は、この理念に全てが集約されています。また、大阪大学は、常に発展し続ける大学です。新たな試みに果敢に挑戦し、異質なものを迎え入れ、脱皮を繰り返すみずみずしい息吹がキャンパスに満ち溢れています。