観光やSDGsなど社会の課題を解決する「ソフトインフラ」とは?
より良い契約や制度へ
現代におけるさまざまな組織の経営、各種の政策は、多くの契約や制度の上に成り立っています。特に観光分野では、自治体、観光協会、観光関連企業など多くが関係します。特定の者が一人勝ちするのではなく、共有した目標に向けて皆が努力し、共存共栄につながる仕組みづくりが大切です。また、そのためには、適切なインセンティブを契約に埋め込むなど、モチベーション向上の取り組みも必要となります。
リスク共有で成功した能登空港
好例が、石川県の能登半島にある能登空港です。2003年の開港時、航空会社は需要が見込めないとして羽田-能登線に1日1便を提案し、利便性を高めたい自治体は1日2便を希望しました。そこで両者が交わしたのが「搭乗率保証契約」です。合意目標の搭乗率に達しなければ自治体が航空会社に保証金を払い、目標を超えたら航空会社が自治体に協力金を払うというものです。リスクを共有することで1日2便を実現し、皆が努力した結果、搭乗率は予想を上回り、自治体が保証金を払ったことはこれまで一度もありません。当初は毎年目標値を見直しましたが、互いに受入れられる契約に調整し便数を維持しています。搭乗者への助成制度などの従来からの施策に加え、最近は閑散期に名所巡りやグルメツアーも投入して利用者を増やし、地域振興に生かしています。
良きソフトインフラが課題解決に
観光資源をうまく活用するには、契約など、良いソフトインフラが重要です。近年は旅行者と宿泊先をつなぐエアビーやほかのプラットフォーマが躍進するなど、新たな環境に対応した検討が必要です。
それはSDGsにも活用できます。CO₂削減は大きな課題ですが、各国の利害が対立し議論が停滞することも多々あります。そこで各国に総排出量を割り当てる代わりに、各国所属の航空機からの単位CO₂排出量を共通の目標とし、その毎年の削減をルール化することで、対立を乗り越え世界全体の合意につなげました。ソフトインフラをどう設定するかによって、課題解決の糸口が見えてくるのです。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 都市環境学部 観光科学科 教授 日原 勝也 先生
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観光・交通政策学、経済学、経営学先生が目指すSDGs
先生への質問
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