講義No.12592 観光学

観光やSDGsなど社会の課題を解決する「ソフトインフラ」とは?

観光やSDGsなど社会の課題を解決する「ソフトインフラ」とは?

より良い契約や制度へ

現代におけるさまざまな組織の経営、各種の政策は、多くの契約や制度の上に成り立っています。特に観光分野では、自治体、観光協会、観光関連企業など多くが関係します。特定の者が一人勝ちするのではなく、共有した目標に向けて皆が努力し、共存共栄につながる仕組みづくりが大切です。また、そのためには、適切なインセンティブを契約に埋め込むなど、モチベーション向上の取り組みも必要となります。

リスク共有で成功した能登空港

好例が、石川県の能登半島にある能登空港です。2003年の開港時、航空会社は需要が見込めないとして羽田-能登線に1日1便を提案し、利便性を高めたい自治体は1日2便を希望しました。そこで両者が交わしたのが「搭乗率保証契約」です。合意目標の搭乗率に達しなければ自治体が航空会社に保証金を払い、目標を超えたら航空会社が自治体に協力金を払うというものです。リスクを共有することで1日2便を実現し、皆が努力した結果、搭乗率は予想を上回り、自治体が保証金を払ったことはこれまで一度もありません。当初は毎年目標値を見直しましたが、互いに受入れられる契約に調整し便数を維持しています。搭乗者への助成制度などの従来からの施策に加え、最近は閑散期に名所巡りやグルメツアーも投入して利用者を増やし、地域振興に生かしています。

良きソフトインフラが課題解決に

観光資源をうまく活用するには、契約など、良いソフトインフラが重要です。近年は旅行者と宿泊先をつなぐエアビーやほかのプラットフォーマが躍進するなど、新たな環境に対応した検討が必要です。
それはSDGsにも活用できます。CO₂削減は大きな課題ですが、各国の利害が対立し議論が停滞することも多々あります。そこで各国に総排出量を割り当てる代わりに、各国所属の航空機からの単位CO₂排出量を共通の目標とし、その毎年の削減をルール化することで、対立を乗り越え世界全体の合意につなげました。ソフトインフラをどう設定するかによって、課題解決の糸口が見えてくるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東京都立大学 都市環境学部 観光科学科 教授 日原 勝也 先生

東京都立大学 都市環境学部 観光科学科 教授 日原 勝也 先生

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観光・交通政策学、経済学、経営学

先生が目指すSDGs

メッセージ

卒業後は、誰もが社会の構成員となります。そこではさまざまな困難や試練もあるでしょう。乗り越えるには、自分の考えを伝え、共通の目的を探り、課題解決に近づくため、必要な道具を習得しておくことが大切です。どんな問題か見極め、どのような視点から解決法を導くのかに役立つ道具を手にしておくと、大きな武器になります。また、社会では必ず人と人とが関わっています。誰かが一人勝ちするのではなく、多様性を認め合い全員が協力しあえるWin-Winの関係を築くことができれば、より良い解決につながるでしょう。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

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東京都立大学は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。