地域の問題を「見える化」する地理情報システム
人文地理学とは何か
人文地理学の特色は、場所に注目して地域の問題点を分析することです。1つの場所には、人の属性や移動、土地利用、自然環境、歴史や文化などさまざまな要素が重なり合っています。それらを、現地で情報を収集するフィールドワークという方法で明らかにして、コンピュータに取り込むことで地域の特色や問題点を「見える化」します。これを「GIS(地理情報システム)」と呼んでいます。GISによって、さまざまな分野の情報の関係性や時系列の変化などが見やすくなります。
観光地をGISで分析する
観光地も、この方法を使って分析できます。例えば、沖縄の宮古島では急激に宿泊施設が増えています。これは、従来からある宮古空港に加えて、2019年に国際線に対応したみやこ下地島空港ターミナルができたことが大きな要因です。この空港ができたことで、海外や本州からのアクセスがよくなり、観光客が増えています。それを見越して多くの宿泊施設が建てられていますが、それが現地の資本なのか県外の資本なのかは、島民の幸福を考える上で大きな問題です。また、宮古島には本州から多くの若者が移住して、居酒屋や民宿などさまざまな事業を起こしています。このようなデータをまとめることで、宮古島の観光の特色が明らかになります。
GISにおける地図リテラシー
GISで重要なのは、このような複合的な情報をいかにわかりやすく表現するかです。例えば、地図を3次元化し、場所を示すだけでなく観光客の動きという時間軸を加えることで、複数の情報を一挙に表現する工夫ができます。また、地図リテラシーも重要です。地図やグラフなどは、表現の仕方によっては誤った情報を伝えてしまうおそれもあります。
地図のデフォルメは、路線図などではわかりやすさにつながりますが、例えば不動産広告なら、実際の距離よりも駅近に表示すれば誤った情報を伝えることになります。情報の発信者も受信者も情報を正しく表現し、理解できることが重要なのです。
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先生情報 / 大学情報
高崎経済大学 地域政策学部 観光政策学科 准教授 太田 慧 先生
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