新しいプラズマエンジンで宇宙をめざす
プラズマを使った新型宇宙用エンジン
2020年12月、小惑星探査機「はやぶさ2」は、小惑星「リュウグウ」の試料を地球に持ち帰りました。このはやぶさ2に使われていたのが「イオンエンジン」です。物質にエネルギーを与えると、固体から液体、気体へと変化しますが、さらにエネルギーを加えると分子や原子から電子が一個取れて、イオンと電子が混じりあったプラズマが生成されます。そのプラズマに高電圧をかけてイオンを加速、噴射して推進力を生み出すのがイオンエンジンです。こうしたプラズマを利用した宇宙用エンジンから出てくるイオンを、より効率的により速くするための研究が行われています。
イオン速度を上げる仕組み
そのひとつが「ホールスラスタ」というイオンエンジンです。高電圧をかけてイオンを加速する場合、局所的な電圧の変化が急であるほど電場は強く、イオンの加速度は大きくなります。ホールスラスタでは磁場をかけて局所的な電場を強くし、イオン速度を増大させる工夫がなされています。約半世紀前から利用されていますが、その原理は複雑でまだよくわかっていない点があり、磁場の最適な強度分布などについての研究が進められています。一方、雷に匹敵するパワーのレーザーを使ってプラズマを作り、さらに短パルス放電で加速させる新たなイオン加速方法も研究されています。
高性能な宇宙用小型エンジンの開発
人工衛星は小型化が進んでおり、現在試作段階にある小型衛星は手のひらに乗るくらいの大きさです。そのためエンジンも小型のものが必要で、目標としてシャープペンシルのノック部分ほどの大きさです。小型化には、効率の低下や部品の小型化による技術的な限界などの課題があります。一方、小さいことのメリットを生かした仕組みも考案されており、新しい高性能な小型エンジンの開発が進められています。また、そもそもプラズマの挙動自体が複雑で未解明な点も多々あり、それらを解明して、新しいエンジンの仕組みとして取り入れることも目標とされています。
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先生情報 / 大学情報
東海大学 工学部 航空宇宙学科 航空宇宙学専攻 教授 堀澤 秀之 先生
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先生への質問
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