なぜ経済成長が遅れ、貧困問題が起きるのか?

発展途上国の貧困問題
東南アジアのカンボジア、ラオス、ミャンマーなどでは経済発展が遅れ、貧困が深刻な問題となっています。経済学では、このような貧困問題を分析していくつかの要因を指摘しています。例えば、農業従事者が多い途上国では、農業開発の遅れが貧困に直結しています。それに加えて工業開発が進まず、農業以外の雇用機会も不足することから、雇用が不安定になり、家庭の経済状況にも大きな影響を及ぼしています。こうした発展途上国の社会・経済問題を研究する分野として、開発経済学があります。
非経済的な視点をプラス
開発経済学では、非経済的な要因も考慮しながら貧困の解決策を探ります。その一つが「人間開発」という視点です。人間開発とは、一人一人が可能性を発揮して、安全で豊かな生活を送れる社会をめざす考え方で、平均寿命・教育水準・所得指数などを指標とします。発展途上国では経済発展の遅れにより政府の財政が圧迫されて、教育や医療に十分な予算を確保できないことから人間開発が遅れています。さらに、政治的混乱がそれらの発展を妨げる要因となっている国もあります。また農業を営む家庭では、子どもが労働力として扱われており、十分な教育を受けられないケースも少なくありません。人間開発は経済だけでなく、教育や保健医療、政治の安定とも深く関わっています。
幸せとは何か
こうした現状を正確に把握するために、現地でアンケート調査が行われます。調査では、現地の言葉で作成した質問を用い、人々の生活の実態を詳しく聞き取ります。その中で、幸せの基準が国や地域によって異なることも明らかになります。
例えば、水に関する質問で「安全」と答えた人がいても、日本の基準では水質が悪い、そもそも水を確保するために片道30分歩く必要がある、という場合があります。それでも「幸せ」と感じる人が多いことから、経済的な指標だけで幸せを測ることの難しさがわかります。開発経済学では、こうした価値観の違いも踏まえながら、貧困の本質を探究していくのです。
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