なぜHe speaks English.なのか?

なぜHe speaks English.なのか?

英語の素朴な疑問

英語を習いはじめると、「三人称単数現在のときには、動詞の語尾にsを付ける」と教わります。He speak English.ではなくHe speaks English.と形を変えなくてはなりません。しかし、これはいったいなぜなのでしょうか? 英語の歴史を紐解くことで、このような英語に関する素朴な疑問も氷解します。

英語の歴史

英語の起源はおよそ1500年前。アングロ・サクソンなどのゲルマン民族が、現在イギリスがあるブリテン島に移り住んだ頃に遡ります。以来、英語はとても大きな変化を経験してきました。昔の英語を読んでみると、現代の英語とはかけ離れているのがよくわかります。英語に変化が大きかったのは、ブリテン島への民族の侵攻などによって、人々の行き交いが盛んだったことが一因です。一方で、1500年前頃に当時の英語と似ていたアイスランド語は、多民族との接触が比較的少なかったため、当時の姿をかなりの程度保持していると言われています。

屈折の衰退

変化のなかで特に重要なのが「屈折」の衰退です。屈折とは、文中の単語の語尾などを変化させることによって、「誰が、誰に、何を」といった文法情報を表すことです。ヨーロッパの言語の多くは英語と同じ祖先(祖語)を持つのですが、その語族の特徴の一つでもあります。現代でも、フランス語やドイツ語といった言語では動詞の活用があります。例えばフランス語のparler「話す」という動詞の場合、一人称単数parle、二人称単数parles、三人称単数parle、一人称複数parlons、二人称複数parlez、三人称複数parlentといった具合に主語によって語形が変わります。英語では、この活用が急速に失われていったのですが、その生き残りが三人称単数語尾のsというわけです。このように、英語の歴史を紐解くことで素朴な疑問が氷解するのです。他にも英語に関する疑問は尽きません。あなたが「英語史」を学ぶときに深く探求してください。

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熊本学園大学 外国語学部 英米学科 講師 矢冨 弘 先生

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メッセージ

英語はコミュニケーション・ツールとして重要なのはもちろんですが、言語として実に興味深い歴史を持っています。多様な社会的・文化的背景を考慮しつつ、「なぜ?」こうなっているのかを考えるのに格好の題材です。英語を多面的に学んでいくことで、社会で必須ともいえる観察力や洞察力、思考力を養うことができます。社会の動きに流されるのではなく、自分なりの意見を持って発信できるようになるためにも、言葉の様々な側面を一緒に考えてみませんか。

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