見えづらさを抱える「ロービジョン」の人たちを助けたい

周辺視野で見る困難さ
人は物を見るとき、網膜の中心窩(か)という部分を使います。なぜなら、中心窩で物を見ると一番見えやすいからです。そして、中心窩で物をとらえると視野の真ん中に見たい対象が来ます。この視野の真ん中を「中心視野」、その周りの部分を「周辺視野」といいます。
ところが病気によって、中心窩を含む黄斑という部分が障害されてしまうと、見たいところで物が見えなくなったり、歪んで見えたりしてしまいます。このような場合は、周辺視野を使って生活を送らなければなりません。しかし眼科では、周辺視野の詳細な検査は行われていないのが現状です。そこで、周辺視野の見え方を解明する必要があるのです。
周辺視野の視力を測定
眼科で行われている視野検査は、中心視野と周辺視野を含めてどれくらいの範囲が見えているのかを、光を使って調べています。しかし、周辺視野の視力(周辺視力)を調べるには光ではなく、文字などを使って視力検査をしなくてはいけません。周辺視力の検査は、目を動かさずにディスプレイの中心をまっすぐ見たまま、周辺に呈示される文字を答えてもらいます。文字の大きさを変えることで、通常の視力検査のように周辺視力を数値で表すことができます。
周辺視力についての研究は、かなり昔に行われた海外のものしか文献がありません。視力検査の視標は、一般的に使われている輪の一カ所が欠けた「ランドルト環」だけでなく、アルファベット・ひらがな・カタカナなど様々な種類があります。条件の違いを考慮して、過去の研究と矛盾がないか調べるところから取り組まれています。
潜在的な視覚障害者は約160万人
視覚障害は全盲とロービジョンに分けられます。ロービジョンとは視機能をある程度使うことができますが、日常生活で不自由がある状態のことをいいます。ロービジョン者を含めると、日本の視覚障害者は約160万人いるとされています。周辺視力の解明は、こうしたロービジョンの人たちの生活改善につながる応用研究のための、基礎となる研究なのです。
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