作業療法には、認知症予防の効果も!

作業療法は野球でいうなら練習試合のようなもの
医学的リハビリテーション分野のひとつに作業療法があります。理学療法との違いは、野球の練習にたとえるとわかりやすいでしょう。キャッチボールやバッティングの素振り、ランニングなどの基礎練習が理学療法、それらをベースとした守備練習、連係プレー、練習試合などの「実践的な応用」が作業療法と言えます。
そして1人の患者さんに、理学療法と作業療法は並行して実施されます。麻痺で身体が動きにくい患者さんには、理学療法士が基本動作を訓練し、作業療法士が基本動作からさらに食事動作や、歯を磨く、衣服を着替えるなど、複雑な動きの生活動作ができるように訓練をします。
認知症予防に役立つ可能性が見えてきた
作業療法は身体的な生活機能の回復だけではなく、認知症の予防にも役立つ可能性があります。認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)の人は、日常生活動作は正常にできても、物忘れが激しいなどの記憶障害などが認められる状態です。近年、早期のMCIと診断された人が作業療法訓練をすることで、認知症への移行を遅らせることがわかってきました。しかし、どんな作業が効果的なのかは、患者さんそれぞれによって違うのではないかと考えられています。
作業療法で「ワーキングメモリー」を鍛える
人間の脳には短い時間に頭の中でいくつかの情報を保持し、並行して処理する能力を受け持つ領域(ワーキングメモリー)があります。電話で誰かの電話番号を聞きながらメモするとき、一時的に番号を記憶しながら筆記するのがワーキングメモリーの機能です。ワーキングメモリーを意識して使用することは認知症予防にとって非常に大切で、目標意識を持って作業や行動をしているときに最も活性化することがわかっています。ですから、MCIの人がそれぞれ自分の好きなこと、つまり目標意識を持って行う作業療法は、ワーキングメモリー機能が効果的に使用され、認知症予防につながるのではないかと期待されているのです。
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四條畷学園大学リハビリテーション学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻 教授杉原 勝美 先生
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